高齢者のインターネット利用が目立っている中で、いま、ネット掲示板「2ちゃんねる」の60歳代以上が集まるカテゴリーが話題だ。達観した書きぶりや言い回しの面白さがあり、親近感を持つユーザーも多い。
総務省の調査(2011年5月18日発表)によると、2010年末時点での世代別インターネット利用率は、60~64歳が70.1%、65~69歳が57.0%、70~79歳が39.2%、80歳以上が20.3%で、2年前に比べて、いずれも右肩上がりで伸びている。
「74歳だけど、何か質問ある?」
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、シニア層の利用者増加について、「インターネットが一般的になったのは10年前の2001年。今の50~60代はバリバリ仕事をしていた時期だし、社内のオートメーション化を経験しているので、(ネットを)使うことには違和感がない。70代の利用者となると、元技術者という人も多いと思います。それに今は、スマートフォンやタブレットPCがあって簡単に使えますからね」と話す。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」には、2008年冬ごろにできた、60代以上が集まるカテゴリー「60歳以上板」がある。高齢者のインターネット利用増加の報道とあいまって、2011年5月19日ごろ、ここにある書き込みが面白いとネット上で話題になり出した。
スレッドには「60歳以上が2ちゃんって…」(10年3月)、「74歳だけど、何か質問ある?」(10年4月)、「若者よ人生金じゃぞ」(10年9月)、「60才のつぶやき」(10年12月)、「パソコン使える老人は…」(11年2月)などがある。
たとえば、「74歳だけど、何か質問ある?」というスレッドでは、「親子四代2ちゃんねらーとは儂の事だ」ときりだしたところ、「言葉のチョイスにセンスを感じる」と笑いを誘った。また、2ちゃんねらーが「老いぼれども、早く氏(死)ねよ 」と罵倒すれば、「一生ニートやってろw残りが長いだけ苦しみも長い」とやり返し、秀逸な切り返し方だと絶賛された。
ほかには「64歳の誕生日をむかえたわけだが、いかんせん一人暮らしなもんで、誰も祝ってくれない。最近はネットで2chやTwitter、ニコ動をしている」と嘆くものや、「若いときに貯めるだけ貯めときなさい。なんなら借りに来い。わしら最後の人助けじゃ。自殺はいかんよ自殺は」と諭すものもあった。さらには、過去そして現在の女性関係を書いた色っぽい内容も多々ある。
「楽しそうに見えて困る」「親近感湧いた」
一連の書き込みに対しては、「元気だなぁ。俺もこんな精力的に生きられるかなぁ」「なんだかんだで楽しそうに見えて困る」「親近感湧いた」「書き込みの貫禄が違う」と好意的に見られ、30代~40代の利用者が多い2ちゃんねらーからは「なんだ未来の俺達か」「老後も俺らの居場所あんじゃん」という意見も出た。
2ちゃんねるでは特定の世代に対して、ののしりに近い書き込みも多く、とくに高齢者に対する批判的な意見も少なくない。これに反する意見も出たことについて、前出の井上トシユキさんは「(10年前は20~30代だった、現30~40代の)心境の変化もあると思います。私もそうですが、10年後のこと将来のことはめちゃくちゃ気になる。ですから、上の世代に対して、バカにできない部分もあるのでは」と分析している。