過労死してもおかしくないほど働かされ、耐えられず退職を申し出た。すると、「損害賠償請求するぞ」と脅され、退職したら本当に2000万円の損賠請求訴訟を起こされた。
そんな、あまりに信じられない事件を紹介した弁護士のツイッターが話題になっている。
「ブラック企業の極みだな…」
弁護士の塩見卓也氏が投稿したのは、2011年5月22日。会社側が提示した損害賠償請求の根拠がすごい。
「意味不明な会社側の証拠を解読したところ、『従業員モチベーション低下数値』という非論理的な数字を損害主張したものだった。脱力・・」
「従業員モチベーション低下数値」とは何か。J-CASTニュースが塩見弁護士に聞くと、具体的な内容については裁判前のため明かせないという。多分、この従業員が辞め、会社に残った従業員のモチベーションが下がったということだろう。
塩見弁護士はその後のツイッターで、「(社員を)奴隷とでも思っているのですかね」「この事件の会社側代理人はこんなものをそのまま証拠に出して弁護士として恥ずかしくないのだろうか…」と怒りをあらわにしている。
投稿には350件以上の「はてなブックマーク」が付き、「ブラック企業の極みだな…」「恐すぎる」などの声が上がっている。
「こんな会社、都市伝説かと思ってた」という声もあるが、こうしたケースは珍しいのか。塩見弁護士は、
「辞めるときに会社側が『損害賠償請求する』と脅してくるケースはよくあるが、実際に訴えてくることはめったにない」
と話す。
会社が被った損害を確定することは困難
その理由は、企業側に勝算がないからだ。茨城労働局や島根労働局のウェブサイトで公開されているQ&Aでは、同じように会社から脅されたという相談に対し、
「(損害賠償の請求は)突然の退職(又は無断欠勤)と会社が被った損害との間に相当の因果関係がある場合に限られ、しかも損害賠償額も会社が実害を受けた範囲内に限られますので、多くの場合、会社が被った損害を確定することは困難と考えられます」
などの回答が掲載され、退職する従業員に対する損害賠償請求の難しさが説明されている。
塩見弁護士も、
「労働者側が横領などの積極的加害行為をしていない限り、このようなケースでは会社側にまず勝ち目はない。勝てると勘違いをしているか、辞める人への腹いせとしか思えない」
と話す。
それでも、今回のように訴えられた場合には、受けて立つしかない。塩見弁護士はツイッターで、訴えを起こした会社に「残業代請求」「安全配慮義務違反」「退職の自由の侵害」などで反訴していることを明かしている。