福島原発水素爆発の不可解 なぜ1、3号機建屋に充満

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   福島第1原子力発電所の1号機と3号機の建屋が水素爆発したのは、不可解な点が多い。なぜ建屋に水素が充満したのか、理由が不明瞭なのだ。

   原子炉圧力容器を覆う格納容器内の圧力を下げるため排出された水素が「犯人」のようだが、爆発に至る経緯については当局もつかみきれていない。

「水素は建屋内に排出」と専門家が指摘

   原子炉内で水素が発生した原因は、地震で原子炉の冷却装置がストップし、核燃料が発熱したまま高温状態が続いたため、燃料棒を覆うジルコニウムという金属でできた被覆管が圧力容器内の水と反応したことによると考えられる。

   米マサチューセッツ工科大学(MIT)原子力理工学部は2011年3月15日、1、3号機の水素爆発の解説をウェブサイトに掲載した。それによると、福島第1のケースのように冷却装置が機能しなくなった場合は圧力容器の安全弁を開放して、原子炉の圧力を下げることが最優先だという。圧力容器から出てきた水と水蒸気の混合物は、格納容器の下部にある圧力抑制室に流れる。そこに貯蔵されている水に、熱い蒸気が混ざって液化することで容器内の圧力が抑えられる仕組みだ。

   しかし今回は、先述のように長時間にわたって核燃料棒が高温状態に置かれたため水素が生成され続け、想定を超える量が格納容器内に流れ込んで圧力が高まったと見られる。こうなると、格納容器の破損を避けるために弁を開けて蒸気を排出して減圧する「ベント」を行わねばならない。

   米スタンフォード大学国際安全保障協力センター(CISAC)は3月21日、招待者のみを対象にしたパネルディスカッションを開催。仏原子力企業アレバの核燃料再処理関連会社で上級副社長を務めるアラン・ハンソン氏が1、3号機の爆発について解説した。資料を見ると、格納容器内を減圧するためにベントを実施、たまった水素ガスを建屋内の上部に放出したと、図とともに説明されている。その結果、建屋内に水素が充満、爆発を引き起こして上部は鉄骨がむき出しになったが、「格納容器のある部分はコンクリートで補強されており、損傷していないようだ」とハンソン氏は結論付けている。

東京電力「水素は排気筒から外へ出す仕組み」

   だが、東京電力の説明は違う。格納容器からベントによって排出された水素ガスの行き場について同社広報に聞いたところ、「配管を通って排気筒から外気に出されます」という。同社ウェブサイトによると、原発の建物内で使われた空気は放射性物質を抑える装置やフィルターをくぐらせた後、排気筒から外に放出されると説明されている。念のため、建屋内に水素を排出する仕組みかを確認したが答えはノー。こうなると、ハンソン氏の主張とは食い違う。

   しかしこの説明では、なぜ建屋内に水素が充満したのかが分からない。東京電力でも「原因を究明中」と話しており、結論にこぎつけていない模様だ。地震による原発内の電源喪失が、排気筒の機能に影響したのかについても聞いた。すると、現時点で分かっているのは、停電によりベントは手動で行わざるを得なかったということだけで、電源が失われたことと建屋の爆発の因果関係も含めて経緯は検証中であると繰り返した。

4号機爆発原因も謎深まる

   米ウォールストリートジャーナルは4月23日付の記事で、ベントが遅れたことで格納容器内の圧力が2倍に達し、排気筒に送られるまでに配管の継ぎ目の素材を傷つけ、そこから水素が漏れ出して建屋に充満した可能性を指摘した。また先述のMIT原子力理工学部は、ベントにより格納容器の上部から排出された水素が建屋上部で空気と混ざり、ある程度の時間をかけてその混合物の濃度が増したところで何らかの発火要因が起きたのではないか、としている。いずれも推測であり、「ナゾ」の解明にはしばらくかかりそうだ。

   4号機でも3月15日に爆発で建屋が損壊した。1、3号機同様に水素爆発と見られていたが、別の可能性が浮上してきた。当時4号機では原子炉が定期検査で停止中だったため、貯蔵プールにあった使用済み核燃料が過熱して水素が発生した疑いがもたれていたが、その後核燃料に損傷が見つからず、また報道によると建屋内には発電機の潤滑油貯蔵タンクやプロパンガスのボンベもあったようで、東電が関連を調べているという。

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