九段会館だけでない地震による天井落下 首都圏の大型施設で続出していた

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   東日本大震災の影響で、首都圏の大型施設でも天井落下の被害が相次いで報告されている。天井が重い材料でできている場合、落下すると生命の危険すらある。専門家は「耐震性の乏しい天井は、揺れにより落下しやすく、行政の対応も必要だ」と指摘する。

   地震が発生した2011年3月11日の九段会館では、専門学校の卒業式が行われていたが、天井の一部が落下。学生ら26人が重軽傷を負い、2人の犠牲者が出た。九段会館は今も休業が続いている。

日本科学未来館も一部が崩落

九段会館(写真)以外の大型施設でも天井落下の被害があった
九段会館(写真)以外の大型施設でも天井落下の被害があった

   建物自体は無事でも天井が落下する例は、首都圏の別の施設でも起きている。

   コンサートホールの「ミューザ川崎シンフォニーホール」では、1~4階部分の客席が、落ちてきた仕上げ材や軽量鉄骨、天井下地などで埋め尽くされた。川崎市によると、現在、被害の原因を究明するため、現場はそのままの状態で保持しており、調査を終えてから改修工事に入る。予定していた公演については中止か、会場を変更して行われている。

   また、動画サイト「YouTube」では、日本科学未来館であった天井落下の瞬間を映した動画が投稿されている。「これはひどい」「えー」など狼狽した男性の声が聞こえた。日本未来科学館によると、本震で天井ボードの一部が落ち、その後の余震で別の部分も落下した。屋根の鉄骨や配管がむき出しの状態だったという。被害を受けて、現在、天井ボードに軽い素材を用いるなどして、天井を新たに作り替える作業中だ。6月中の開館を目指している。

   神奈川県の横浜駅西口近くにある商業施設「ハマボール イアス」。8階にあるボウリング場「ハマボール」でも被害があった。運営会社の発表によると、震災から1か月経った4月11日、営業再開の可能性、時期、方法等について検討を重ねたものの、復旧の目処がたたず、ボウリング場は閉鎖し、事業から撤退することになった。

   そのほか、個人ブログやツイッターなどでは、震災時に首都圏のフィットネスクラブや映画館に居合わせた人たちが天井落下の様子を写真付きで紹介している。

「明確な耐震性能を記述する必要がある」

   首都圏のホールやスポーツ施設など大規模施設で、なぜ天井が落下してしまったか。

   構造エネルギー工学を専攻する筑波大学の金久保利之准教授は、「一般的に大空間の建物は、屋根の構造材(梁や床スラブなど)から天井までの距離が長い(懐が深い)。耐震性の乏しい天井、たとえば補強する部材のない場合などは、地震動の揺れにより落下しやすい」と説明する。こうした天井は、注文や施工がしやすいという特徴があった。

   天井の落下は以前にも問題になったことがある。金久保准教授は「2000年代にも同じような形式の天井パネルの落下事故が見られ、国土交通省や文部科学省では、標準仕様書というかたちで耐震性の高い天井を施行するように指導しています。今回の地震で落下した天井では、これらの仕様書の作成前に施工されたものが多いようです」と言う。地震を受けて、既存の建物についても天井の耐震性について考慮する必要があり、同教授は「法令や規準などで明確な耐震性能を記述する必要があるように思います」と指摘する。

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