東日本大震災による津波で、被災地に住む人の多くは乗っていたクルマを失った。通常、自動車保険に加入していても自然災害は免責事項になので保険金は出ない。
ところが、自動車保険には「地震・噴火・津波危険補償特約」(地震特約)があり、この特約に加入している人には保険金が出る。「加入しておけばよかった」――。そう後悔している人は少なくないはずだが、そもそも認知度が低く、加入者は全国でも自動車保険に加入している人のわずか1%にも満たない。
「国の後ろ盾がなく、リスク負えない」
自動車保険にかかる地震特約は、火災保険で売られている一般的な地震保険とは仕組みが異なる。一般的な地震保険は保険金の半分を国が支払っているので、損保会社の支払いリスクは半分に抑えられている。
一方、自動車保険の地震特約は、損保会社が海外などの再保険会社に保険料を支払って保険金の支払いリスクを抑えるか、自らがリスクを負って備える仕組みだ。
損保会社がリスクを負うため、各社はこれまで積極的に販売してこなかった。 東京海上日動火災保険は、「地震保険は国の後ろ盾があってのもの。民間がとれるリスクには限りがある」と、消極的だった理由を説明する。
「一般に保険商品は自然災害が免責事項なので、そもそも地震保険や特約が例外的なもの」(大手損保の関係者)との認識だ。
とはいえ、加入の募集について、ある損保は「特定の人に案内しているわけではない」という。また、東京海上日動は「約款には(特約があることを)記載していて、申し出があった人には対応してきた」と話している。