暴力団による抗争が相次ぐ福岡県で、県警がウェブサイトで「手りゅう弾に注意!」と題した異例の呼びかけをしている。手りゅう弾が持つ威力や、手りゅう弾らしき物体を見つけたときの対処方法を説明したものだ。
県内で手りゅう弾を使用した事件が相次いでいることを受けてのものだが、この種の呼びかけが行われるのは前代未聞。地元メディアですら、驚きを隠しきれない様子だ。
半径10~15メートル以内は死亡または重傷
呼びかけの文章では「色や形は様々!」という見出しとともに、円筒形や、だ円形の4種類の手りゅう弾の写真を掲載。「手りゅう弾は破片を飛散させて人を殺すための武器!」と注意を呼びかけている。さらに、「手りゅう弾の威力は想像以上」として、爆発した場合、半径10~15メートル以内では死亡または重傷、半径50メートル以内では破片で重傷を追う可能性があるとしている。
さらに、手りゅう弾らしき物体を発見した場合は、(1)絶対に踏んだり、触ったり、蹴飛ばしたりしない(2)早急に手りゅう弾から離れる(3)物かげなどに隠れて身の安全を確保する、といった対応を求めている。
手りゅう弾を使用した犯罪が急増
この文書は、2011年4月28日に掲載が始まったばかりだ。手りゅう弾についての警告文書が発表されるのはきわめて異例だが、文書のサブタイトルに「手りゅう弾を使用した犯罪が急増!」とあるように、福岡県内では手りゅう弾関係の事件が3~4月の2か月間で、4件も発生していることが背景にある。さらにそのうち2件は、九州を代表する企業のトップが狙われている。暴力団間の抗争にとどまらず、いわゆる「堅気」(かたぎ)と呼ばれる民間人が狙われることは非常に珍しい。
3月5日には、福岡市東区の九州電力会長宅の車庫で手りゅう弾によるものとみられる爆発が起き、同市中央区の西部ガス社長宅の玄関前では、安全ピンが抜かれた状態の手りゅう弾が見つかった。不審に思った家族が拾い上げたが、運良く爆発はしなかった。
4月6日には、大牟田市の指定暴力団誠道会本部事務所近くで車が電柱に激突して炎上。車の中にいた暴力団関係者の男性2人の死亡が確認された。車内の手りゅう弾が爆発したとみられ、車内からはタオルにくるまれた別の手りゅう弾や、その近くでは拳銃も見つかったという。
「いったい、福岡県とは、どんな街なのか」
さらに4月15日には、大牟田市郊外の路上で手りゅう弾らしき物体が発見されている。車にひかれたような跡があり、一歩間違えば爆発していた危険もある。
これだけの頻度で手りゅう弾関連の事件が起こるのは福岡県内でも珍しく、地元メディアでも驚きをもって受け止められているようだ。例えば地元局のRKB毎日放送(TBS系)では、4月28日夕方のニュースの最初の項目で、男性キャスターが
「『いったい、福岡県とは、どんな街なのか』。そんな声が聞こえてきそうなニュースからです」
と、県警ウェブサイトの話題を切り出した。