福島第1原子力発電所の事故は、深刻な事態を打開できないままだ。1~3号機では核燃料が破損し、一部は溶け落ちていると指摘された。
さらに1、2号機では、付近の地下水に含まれる放射性物質の濃度が増し、3号機では原子炉内の温度が急上昇と、片時も気の抜けない状態が続いている。
核燃料の一部が溶融し、一部が圧力容器の底に
日本原子力学会の原子力安全調査専門委員会は2011年4月14日、福島第1原発の原子炉の分析結果を発表した。それによると原子炉の圧力容器内にある核燃料は、3号機ではすべてが水に浸かっている半面、1、2号機では一部が露出している。さらに1~3号機では核燃料の一部が溶融し、その一部が粒子状になって圧力容器の底にたまって冷えているとの見解だ。
たまっている燃料が熱を帯びれば、圧力容器を破る危険も生じるが、現時点では水で冷やされており心配はなさそうだ。ただし、停電が発生して燃料の冷却に支障が生じれば、温度が上昇して危険な状態になる可能性は否定できない。
同委員会では、圧力容器が爆発するような事態に陥ることは今のところ考えられないとしたものの、復旧作業が順調に進んだとしても「核燃料が安定するまで2、3か月はかかる」と長期戦になる見通しを示した。
「最悪の事態」にはならないようだが、原子炉については不可解な点も多い。同じ4月14日、東京電力は会見で1、2号機のタービン建屋近くで採取した地下水の放射性物質の濃度が、4月6日からの1週間でおよそ10倍に増えていることを明らかにした。
さらに15日には、2号機のトレンチにたまった高濃度の放射能汚染水の水位が再び上昇したと東電が発表。トレンチからは、復水器へ660トンの汚染水を移送する作業が行われていったんは水位が下がっていた。しかし15日には地表から91センチの水位に達し、移送前の状態に戻った格好だ。
2号機では、一時汚染水が海に流れ出して漁業関係者らから批判を浴びた。東電ではトレンチからの再移送を検討しているが、復水器の容量にも限りがあるため、原発の敷地内に仮設タンクを設置したり、「メガフロート」を配備したりと汚染水対策を急ぐ予定だ。