震災のがれき1年後にハワイに漂着 3年後米国西海岸、という予測

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   東日本大震災では、東北地方の太平洋沿岸地域で、多くの建物や車が津波で流されて大量のがれきと化し、今も被災地でうず高く積み上がったまま残されている。津波の「引き波」で海に流れ出した分も多い。

   太平洋上を漂うがれきは海流や風に乗って運ばれ、遠くハワイや米国西海岸に漂着するものもあるという。中には有害物質を含むものもあるようだが、回収方法を含めて有効な対策を打ち出せていない状況だ。

潮目の状態で漂流物がたまりやすい

がれきは北太平洋上にたどり着くとの予想(IPRCのウェブサイトより)
がれきは北太平洋上にたどり着くとの予想(IPRCのウェブサイトより)

   震災で生じたがれきの量は、環境省の推計によると岩手、宮城、福島3県で2490万トンに上る。このうちどのぐらい海に流れ出したかは、環境省でも把握していないと話す。重いものは海の底に沈んだと考えられるが、木材をはじめ軽量であれば海を漂っているはずだ。一部報道では、長さ111キロにも及ぶ巨大な漂流群を形成しているという。

   この「塊」はどこへ向かうのか。ハワイ大学マノア校にあるIPRC(国際太平洋研究センター)は2011年4月5日、がれきの漂着先に関するシミュレーションの結果を発表した。それによると、日本の沿岸を離れたがれき群は海流にのって北太平洋を進み、1年後には北太平洋の中央付近にある「北太平洋ゴミベルト」と呼ばれる場所に到達するという。

   海洋のゴミ問題を研究する一般社団法人「JEAN」に聞くと、この「ゴミベルト」は、潮目の状態で漂流物がたまりやすい場所を指すのだという。常に洋上に「ゴミの島」が浮かんでいるわけではないが、流れ着いたゴミがあちこちに滞留している様子はよく見られるようだ。ゴミベルトの南側にはハワイがあり、がれきの一部はハワイ北西にもたどり着くとIPRCは見ている。

   さらに2年後には、ハワイのほかの島にも漂着。残りは北米大陸に向けて進み、3年後には米カリフォルニアからアラスカ沿岸に到達するとの予測だ。

   太平洋の海流は「還流」だ。日本からハワイ方面に向かう北太平洋海流は、米西海岸にたどり着くと、今度はアジアに向けて南太平洋を逆方向に進んでいく。そのため、残りのがれきはそのまま流れに乗ってハワイ方面へ「戻る」形となり、2015年3月には「ゴミベルト」に流れ込むとIPRCは考える。

被災地復興最優先で海洋まで手が回らない

   海洋のゴミ問題は、長年議論されている。震災によるがれきは故意に投棄されたものではないが、あまりにも大量であり状況は深刻だ。しかし、漂流するがれきに対する対策は、現時点では「検討中」(環境省)。震災による人命救助や被災地の復興が最優先で、海洋のがれき処理にまで手が回らないのが実情だろう。

   前出の「JEAN」は、「がれきは、すべてがひとつに固まって漂流するわけではなく、長い距離を進むうちに拡散していきます」と説明する。「北太平洋ゴミベルト」に漂着するころには、現在よりも分量は減っていることが予想される。だが、生活品のあらゆるものが流されており、中には油性の廃棄物や化学品のように有害物質を含んでいるものもあるだろう。海洋汚染や生態系への影響は心配だ。

   スマトラ沖地震の際も、大量のがれきが海に流出したと想像されるが、JEANによれば日本への直接的な被害は報告されておらず、海外でも大きな問題としては扱われなかったという。しかし今回は、住宅から車、電化製品、家具などスマトラ地震の時とは比較にならないほど多種多様のモノが流れ出した。「日本発」のがれきが世界中の海に与える負荷を考えると、なんらか対応が必要なのかもしれない。

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