東日本大震災で、三陸沿岸の漁業は壊滅的な打撃を受けた。多くの漁港は津波で破壊され、震災から1か月たっても復旧の道筋が見えない。
三陸は、高級食材として中華料理には欠かせないアワビの名産地だ。特に岩手産アワビは評価が高く、中国や香港に多く輸出されている。アワビ漁ストップの影響は小さくないようだ。
江戸時代から中国へ輸出
水産庁に聞いたところ、2009年の全国におけるアワビ類の生産量は1855トンで、このうち岩手県が531トンとおよそ3分の1を占め「日本一」となっている。2位は宮城県の213トンで、三陸沿岸が全国でも有数のアワビの漁場であることが分かる。
アワビは中華料理の中でも高級メニューとして知られる。横浜にある中華街の老舗広東料理のレストランには、「アワビの姿煮」「アワビのオイスターソース煮」といった1品料理のメニューが並ぶが、値段は1皿で4000円から5000円だ。
アワビの中でも、岩手県産「エゾアワビ」は高級な素材として評価が高い。NPO法人の海事・水産振興会に聞くと、大きくて肉厚な岩手産アワビは中国で人気が高く、「ブランドとして定着している」という。岩手県大船渡市にある吉浜漁業協同組合のウェブサイトには、この地で採れるアワビに関するページがある。中国へは「乾燥アワビ」として江戸時代から輸出が続いているという。また、中国で食べられている乾燥アワビの8割は三陸産だったそうだ。
しかし、震災と津波で、三陸の漁業の再開は見通しが立っていない。吉浜地区も漁港が破壊され、漁協の建物も全壊。漁船も大半が壊れてしまったため「商品を提供できる状態にない」(同漁協のウェブサイト)状態だ。宮古市では2011年4月11日に魚市場が再開したものの、漁業を営む大勢の人の船が津波で流され、多くの港で設備が復旧していない現状では、アワビ漁の見通しも厳しい。