想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」。土木学会など3学会は、こうした内容を盛り込んだ共同緊急声明を発表した。東北関東大震災や福島第1原発事故について「想定外」を繰り返す東京電力や菅直人首相らに対し、専門家らが苦言を呈したようだ。
声明を発表したのは、社団法人の土木学会をはじめ、地盤工学会、日本都市計画学会の3学会だ。2011年3月23日、阪田憲次・土木学会会長らが会見を開き、声明文は同学会サイトなどでも公表した。阪田会長は「安全に対して想定外はない」と指摘した。
ワイドショーも「想定が甘かったのでは」
「(福島第1原発を襲った)津波の規模は、これまでの想定を超えるものだった」(清水正孝・東電社長、3月13日会見)、「今回の地震が、従来想定された津波の上限をはるかに超えるような大きな津波が(略)」(菅首相、3月12日会見)――このほかにも、テレビなどに出演する「専門家」らが、連日のように「想定外」という言葉を使っている。
専門家はともかく、東電など「当事者」が使う「想定外」には、いらだちを募らせる被災者らも少なくない。マスコミも「東日本大震災:福島第1原発 東電『想定外』に批判の声も」(毎日新聞ネット版、3月12日)、「不安 憤り 諦め…2度目の爆発『想定外と言うばかり 対応が甘い』」(スポーツニッポン・ネット版、3月14日)などと報じている。
3学会の声明文では、「われわれが想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」と指摘している。その上で、「自然の脅威に恐れの念を持ち、ハード(防災施設)のみならずソフトも組み合わせた対応という視点」の重要性をあらためて確認すべきだと訴えている。
声明文では名指しはしていないが、東電や政府関係者が使う「想定外」という言葉に「言い訳」のニュアンスをかぎとっている、と読めなくもない。テレビのワイドショーでは、TBS系「みのもんたの朝ズバッ!」(3月14日放送)で、TBS解説室長の杉尾秀哉氏が「地震の規模が想定外というが、想定が甘かったのでは」と指摘するなどしている。