東北関東大震災で被災した福島第1原子力発電所の問題で、海外メディアが厳しい視線を向けている。特に政府や東京電力の対応力を疑問視しているようだ。
過去に原発の検査漏れを起こしてきた東電の体質や、原子炉のぜい弱性が指摘されながらもそのままにした当局――。外国メディアが配信した記事の見出しには、「最悪への道をたどるのか」と強い調子のものもある。
NYタイムズ、東電のずさんな検査体制指摘
「日本政府、原子炉のぜい弱性に対する指摘を無視」
米ウォールストリートジャーナル(WSJ)電子版は2011年3月23日、このような記事を配信した。それによると原発関係機関は、東北関東大震災が起こる数か月前から、原子炉を冷却する「復水器」と呼ばれる新たな装置の利用を検討していたという。復水器は電力が不要で、炉心が過熱して発生した水蒸気をこの装置に通して冷やし、再び炉心に戻す仕組みだ。福島第1原発では、地震と津波で電力供給システムが不能に陥り、炉心冷却装置を作動させるすべを失った。仮に、電気に頼らない復水器が十分に整備されていたら、事態の深刻化を防げたかもしれない。WSJによれば、最終的に当局は復水器設置の論議を重視せず、炉心は「ぜい弱」なまま残ったとしている。
地震が発生してから、海外メディアは被災地に記者を投入し、津波の悲惨さや避難所の人たちの厳しい生活状態を伝えてきた。同時に、福島第1原発の危機的な状況についても連日報道、事態を収拾できない政府や東京電力に批判的な論調となっている。
米ニューヨークタイムズ(NYT)電子版は3月21日付の記事で、運転開始から40年となる福島第1原発1号機について、経済産業省原子力安全・保安院が今後10年間の運転継続を認めていた点を指摘した。原子力安全・保安院は2月7日付文書で、この点を原子力安全委員会に報告したとしている。国内で40年を経過した原発はほかにも敦賀原発1号機や美浜原発1号機がある。
ところがNYTによれば、2月28日になって東京電力が、福島第1で33の機器について自主検査漏れがあったことを明らかにしたという。NYTは「1号機の使用延長と、福島第1原発全体での機器検査のずさんさは、原発の運営者である東電と関係当局の不健全な関係を際立たせる」と断じた。同紙は3月15日にも、福島原発で使われている原子炉が、米ゼネラル・エレクトリック社が1960年代に開発した当初からぜい弱性を指摘されていたことを伝えている。