飛躍的には増えないという見方も有力
ただ、メーカー側の熱気とは裏腹に、市場には変調も見られる。例えば肝心のiPad。アップルは国内の販売台数を公表していないが、どうやら爆発的に売れ続けているわけではないようだ。状況証拠として、発売当初こそ予約が殺到し納品待ちの時期もあったが、夏場には納品待ちが解消。当初はブランド価値を高めるために絞り込まれていた取扱店も徐々に拡大しており、「アップルが販売をテコ入れしているのではないか」(ある量販店)と受け止められている。
iPad人気がもう一つ爆発していない背景にはソフト不足もありそうだ。日本の電子書籍市場自体は、携帯電話向け漫画配信を中心に2009年度で630億円(矢野経済研究所調べ)あり、iPad以前から既にそこそこの市場だった。だが、端末の発売や配信サービス開始が相次ぐ10年度でも前年度比6.3%増の670億円程度の見込みで、飛躍的には増えないと同研究所は見ている。
背景には一般の新刊の電子書籍が米国のようにどんどん出されるわけではなく、「試験的に出してみた」程度でとどまっているという事情もある。誰も大きな声では言わないが、作家→出版社→印刷会社→取り次ぎ→書店という日本の強固な絆を崩してまで電子書籍に移行しようというインセンティブに乏しいためだ。そうした現状にどこまでインパクトを与えるか、「リーダー」をはじめ国内で発売が相次ぐ電子書籍対応端末の動向が注目される。