「巨額の評価損を被るのが心配」
銀行も、そう簡単に国債を手放せない理由がある。銀行が国債保有残高を増やしてきた背景には、企業融資の伸び悩みがあった。本業の不振で「やむを得なかった」とはいえ、現状では国債なくして収益は確保できない。
たとえば、2010年9月期決算で大幅増益を果たしたメガバンクだが、好調の要因は市場部門にある。3グループとも前年同期に比べて債券売買益が1000億円以上も増えた。
もし、このまま大手銀行が国債の保有残高を減らすことになれば、国債の下落リスク(長期金利は上昇)は高まる。一方で政府は国債をまだ増発しようというのだから、機関投資家が持ちきれなくなって、「暴落」の可能性はさらに高まる。
前出の嶌峰氏は、「今すぐでなくても、日本でも金利が上昇したときに巨額の評価損を被るのが心配になったということはあるでしょう」と、銀行の動きは当然とみている。
国際金融アナリストの枝川二郎氏は「銀行も、そうそう引き受けられるはずがない。そうなると、日銀の出番(引受け手)になる」と読むが、大手銀行の国債売りは暴落の「シグナル」なのだろうか。
枝川氏は、「銀行の資産は、貸し出しと国債が2大項目で、通常この2つが対称的に動く。10月末は国債が減ったうえに、企業への融資残高も減少した。これがなんらかのトレンドを示しているかどうかは、もう少し様子をみないとわかりませんね」と話している。