高橋洋一の民主党ウォッチ
「日銀法改正」試される民主の度量 みんなの党案に乗れるか

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   国会が終盤になって大荒れだ。国会答弁はふたつだけあればいいという問題発言から柳田法相辞任に至り、さらには仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相の問責決議という段階になっていた。しかし、2010年11月23日、朝鮮半島での北朝鮮砲撃事件が起きた。国家危機は、政権にとってまたとない追い風になるのは古今東西を問わない。これを危機と演じられれば、菅政権によって恵みの雨となる。野党にとっても、問責決議案で国会をストップさせると国民から非難を浴びる恐れがある。というわけで、国会の様相が変化するかもしれない。

   こういう時は、粛々と国会は仕事をしてもらいたい。国会は法律をつくるのが仕事であり、その材料は事欠かない。たとえば、11月19日、みんなの党(渡辺喜美代表)は、「日本銀行法の一部を改正する法律案」(日銀法改正案)を国会に提出した。そのポイントは、(1)日銀の金融政策の目的に物価の安定とともに雇用の安定を明記し、(2)政府がインフレ目標を定め、(3)役員の解任について役員に値しない場合を加えたことなどである。なお、インフレ目標を達成することができなかった場合でも、日本銀行からその合理的な理由について説明があったときは、解任されない。みんなの党は、先の参議院選挙のアジェンダにインフレ目標を掲げており、渡辺喜美代表は、参議院選挙後に日銀法改正を提出すると明言し、その約束を守った形だ。

日銀法改正案に賛成する国会議員は過半数以上

   これを受けて、民主党の有志議員による「デフレ脱却議連」(松原仁会長)は11月24日、声明を発表した。声明では、民主党の政策調査会・財務金融部門会議において、日銀法改正を視野に入れて、中央銀行や金融政策のあり方を含む諸政策について検討を行っているとし、日銀法改正案には、(1)雇用最大化を日銀の金融政策の目的に加える、(2)物価安定目標政策を導入する、(3)日銀総裁、副総裁、政策委員会審議委員の選定のあり方を再検討する、の3点を含めることが望ましいと指摘している。

   この案について、中央銀行の独立性を持ち出して批判する向きもあるかもしれない。しかし、その批判は世界の常識からずれている。バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長が、先日日銀で講演したように、中央銀行の独立性とは、目標まで中央銀行でたてるという目標の独立性はなく、政府の目標の範囲内で手段を講じられるという手段の独立性に限られる。これは、中央銀行が、広い意味での政府の一員(子会社)である以上当然の話だ。そして、政府から中央銀行に目標を与えれば、その目標達成のために行うのが金融政策となる。

   こうした世界の常識を民主党デフレ脱却議連もみんなの党も共有しているので、なんのことはない、両者が示した案はほとんど同じである。私は、両方の勉強会に参加したことがあるが、正直言って、両者の基本的な考え方に差があるとは思えなかった。ついでにいえば、自民党の一部の議員とも話したことがあるが、彼らとも同じである。公明党もインフレ目標を先の参議院選挙のマニフェストに掲げており、賛同者が多い。個人的な意見と限れば、みんなの党が公表した日銀法改正案に賛成する国会議員は過半数以上であろう。

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