主要20か国・地域(G20)首脳会議の開催地に選ばれた韓国。動きの鈍い日本とは対照的に、米国やEU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)を積極的に進めている。自動車やエレクトロニクス製品を中心に、輸出の拡大にアクセルを踏もうとしている。
世界的な不況が続いているにもかかわらず、2010年に10月には輸出額が過去最大を記録。絶好調といってもいいのに、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙が「韓国経済に未来はない」と強い懸念を示したのだ。
今でも妊娠した女性に退職促す風潮
WSJの2010年11月8日付記事の見出しは「奇跡の終焉」だ。G20の開催地、韓国を特集し、今後の経済を展望している。世界15位の経済力に成長し、サムスン電子や現代自動車といった世界的に競争力を持つ企業も誕生した一方、国内総生産の43%を輸出に頼っており、政府関係者の「新たな雇用を生み出すうえで輸出産業には限界があるのは明らか」との発言を引用している。
成長の維持には、政治や経済、文化の面での変化が欠かせないとして、特に伝統的に続いてきた男性優位の社会構造を根本から変えるべきだと提言。そのために女性の雇用を増やし、起業を奨励し、外国人移民にも門戸を開くべきだと主張した。
数字の面でも韓国の未来は厳しいとWSJは見る。1990年代の経済成長率は年6.2%だったが、2005~09年は年3.4%に下落。さらに深刻なのは、女性1人当たりの出生率が1.15人で、主要国では最低という事実だ。近年は就職難で、大卒でも仕事にあぶれた若者が増加。まるで日本の今日の姿を見るようだ。
女性の就業率は53%と、主要各国の平均値よりも低い。賃金も男性のおよそ半額。「90年代まで学校の教科書には、女性は家庭を守るべきだと載っていた。今日でも、仕事をもつ女性が妊娠すると、退職を促される」と苦言を呈する。
韓国の李明博大統領は、「経済成長7%」を掲げて国民の支持を集めたが、その実現には、生産性の向上に加えて女性や高齢者の大幅な雇用増が欠かせないとの米大学教授の証言を引用している。
日本貿易振興機構アジア経済研究所の主任研究員で、韓国経済や産業が専門の安倍誠氏によると、WSJの記事は韓国内でも話題になっているようだ。「構造的に韓国は磐石でない、という指摘は正しい部分もあります」と話す。