「クマを殺さないで!」批判殺到 猟友会「現実分かっているか」と反発

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   野生のクマが山から人里に下りてきて畑や畜舎を荒らすなどの被害が全国で起きている。民家の近くに現れると命の危険があるため周辺の住民は近くの公民館などに避難。町や地元の猟友会メンバーが射殺するなどして難を逃れている。

   ところが、市町村や猟友会に対し、クマの射殺を知った人達から「クマが可哀想だ」との苦情が大量に寄せられている。関係者は苦情の多さに対し「住民の命を守ろうとこちらも命懸けなのに…」と憮然としている。

北海道の町役場には非難のメールや電話が100件

   北海道斜里町の小学校近くの林にヒグマがいるとの目撃情報が2010年10月18日午前11時半頃にあった。その後、市街地に現れ地元猟友会が2頭を射殺した。けが人はなかったが、クマはもう一頭いたとの情報があり、小学校は児童を集団下校させた。

   射殺されたのは親子だった。このニュースが流れると、斜里町役場には電話とメール合計100件近くの苦情が来た。内容は「どうして殺傷したんだ。他の方法はなかったのか」というものが多かった。

   斜里町役場によれば、ヒグマ目撃情報は年間で800件ほど寄せられ、畑や畜舎が荒らされたり、人間に危害が出る可能性がある場合など担当者が出動し、威嚇弾を放つなどして山に追い払ってきた。しかし、市街地にクマが出た場合は付近の住民を避難させたうえで射殺する。大きなヒグマは160キロから200キロあり、生け捕りしようにもリスクがあまりにも大きいのだという。

   富山県朝日町では10月19日から20日にかけ民家近くに3頭の親子クマが現れ、住民は老人福祉センターを避難所として一夜を明かすことになった。20日に町は親クマを射殺、子グマ2頭は山に戻ったという。福島県西会津町では10月23日朝、民家近くの空き地に2頭の親子グマがいるという通報が町役場にあった。町は住民の安全を優先しこの2頭を射殺した。この2つの町役場に取材したところ、苦情が寄せられているという。西会津町では

「たくさんの意見や感想、クマの保護に関する提案が来ているが、その数や内容は明かせない」

としている。

「人間の命かかっているのに、クマはかわいい、だとか、もうガッカリ」

   市街地に現れたクマを駆除し人命を守るために活躍してきたのが猟友会のメンバーだ。その全国組織「大日本猟友会」本部に話を聞くと、この3、4日で50を超える非難のメールや電話が相次いでいるという。大日本猟友会は取材に対し、

「クマがどれだけ危険なのか、現実を分かっていない人が多い。人間の命がかかっているのに、クマはかわいい、だとか、クマが可哀想だとか、もうガッカリを通り越して、参ったという感じだ」

と嘆く。批判の中には麻酔銃を使え、山に誘導すればいい、といったものがあるが、どれも突然民家近くに現れた野生のクマに対しては机上の空論だと打ち明ける。

   かつては里を荒らし、人間の命を脅かすクマを仕留めたハンターはちょっとした英雄だった。現在は批判の対象になる場合がある。大日本猟友会の会員数は一時期40万人いたが、現在は10万人を切った。それは若い人が参加しなくなったからだ。日当が千円ということもあり、「割に合わない」と考えるようになったからだという。

「このまま減り続ければ10年後に困った状況になる。誰が害獣から住民を守るのかという心配事が迫っているんです」

そう大日本猟友会では話している。

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