SNSサイト「mixi」が、3日間にわたってアクセス障害に追い込まれた。いったん復旧した後も2度目のダウンが起き、長時間ユーザーをやきもきさせる事態となった。
mixiの運営会社であるミクシィの笠原健治社長がサイト上で謝罪文を出したものの、記者会見を開いて詳細を説明する予定はない。国内最大手のSNSとして、また上場企業として、トラブル発生後のリスク管理は十分だったといえるだろうか。
3日間にわたるアクセス障害
mixiがつながりにくくなったのは2010年8月10日の午後5時ごろ。接続を試みると、画面には「復旧作業中です」の文字が表示され、しばらく時間がたってから再度アクセスするよう促していた。だが実際は、その後数時間は接続不可能な状態が続いた。
サイト運営事務局の説明によると、10日午後11時30分ごろにいったん利用可能となったものの、翌11日午前11時ごろからは再びアクセス障害が発生した。完全復旧したのは、12日の夜中1時50分ごろ。10日~12日と3日間にわたって不備をさらしてしまう格好となったのだ。
ネット上の掲示板にはこの間、「mixiにずっと入れなくて超困るとか何とか話しているのが耳に入った」「一瞬回復したがすぐダメになった」といった書き込みが見られ、復旧後も「今にまた落ちそう」と不安な様子を見せるユーザーも現れた。つながらない時間が長かったため、mixiに日記を書くのを諦めてブログに書いたという人もいた。
障害の原因は、サイトのデータを一時的に保存してデータベースの負荷を軽減する「キャッシュシステム」の複数が同時に不具合を起こし、データベースの負荷が急増したこととミクシィは説明する。再発防止のため、キャッシュシステムそのものの負荷を軽くする措置や、今回のようにキャッシュシステムに障害が起きてもmixi全体に影響しないような方法を検討するという。
「説明責任を果たす姿勢が必要」
ミクシィの笠原健治社長は、一連のアクセス障害についてmixi上で謝罪した。だがミクシィ広報部によると、「記者会見を開く予定は特にありません」とのこと。ユーザー数2000万人を数える国内最大のSNSサイトを運営し、東証マザーズにも上場している企業であることを考えると、会見を開いて一般の人に向けても丁寧に説明してもいいように思える。
企業の危機管理広報に詳しいエイレックス社長の江良俊郎氏によると、会見を開くケースは、人体に害を及ぼすような事故を引き起こした場合が多いという。だがそれ以外でも、例えば04年に「ジャパネットたかた」が顧客情報を漏らした際、高田明社長が会見で説明、陳謝している。現状ではmixiの会員のデータが漏えいしたなどの「重大な被害」は出ていないので、会見を開くか開かないかの判断は難しいと江良氏。一方で、「(事態収拾までに)3日間は時間がかかりすぎ」とも指摘する。何もしないまま万一同じようなトラブルが起きたら、今度は顧客にそっぽを向かれる恐れがある。
千葉商科大学政策情報学部の藤江俊彦教授は、「たとえ『重大被害』がなくても、会社の規模を考えれば社会に与える影響は大きく、会見を開くべきだ」と話す。ユーザー数2000万人の上場企業として、「企業の社会的責任(CSR)の観点から広く一般に情報を開示し、説明責任を果たす姿勢が必要」というのだ。メディアはもちろん、有力なブロガーに向けて会見を行い、きちんと責任を果たしている様子を記事に書いてもらうことで、むしろイメージアップとなり企業価値を高めるチャンスにもなり得ると藤江教授は考える。
アクセス障害が続いていた間にミクシィの株価は下落し、ツイッター上では「倒産」とのデマまで流れた。自分の顧客に向けたサイト上だけの説明に終わらせずに、会見を開いたほうが「得策」ではないだろうか。