菅直人首相が2010年8月10日、首相官邸で記者会見を開いた。会見では、この日閣議決定された、日韓併合100年にあたっての談話についての質問が相次いだ。談話は、過去の植民地支配に対する「反省とおわび」を盛り込んだもので、野党だけでなく、与党内からも批判が続出。談話の意義を問う質問が出ても、菅首相は「これからの100年にむかって、これから協力してともに歩んでいこう。そういう気持ちを込めて談話を作成した」などと歯切れの悪い回答に終始。国民の理解を得るのは難しいとの指摘も出そうだ。
談話は、終戦50年の1995年の「村山首相談話」を踏襲する形で、
「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします」
と明記し、宮内庁が管理している朝鮮王朝時代の書物「朝鮮王朝儀軌」についても、
「韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたい」
とした。
「準備の早い段階で相談あってしかるべき」
談話をめぐっては、与野党から批判が相次いでいる。例えば自民党の谷垣禎一総裁は8月10日、
「未来志向の日韓関係に妨げとならないか強く懸念させるものです。なぜこのようなものになったのか。問いたださなければならない」
とツイッター上に書き込む一方、玄葉光一郎公務員制度改革相(民主党政調会長)も、同日午前の閣議後の閣僚懇談会で「準備の早い段階で、政調会長に相談があってしかるべきではなかったか」
と、苦言を呈している。
同日15時から首相官邸で開かれた会見では、李明博大統領との電話会談の内容について
「『真心のこもった談話だ』ということで大変評価もいただいた」
と明かす一方、その意義については
「日韓併合100年という節目。逆に言えば、これまでの100年の中で、反省すべきところはきちんと反省する。そして、これからの100年にむかって、これから協力してともに歩んでいこう。そういう気持ちを込めて談話を作成した」
と述べるにとどまった。
「戦略的な視点から、今回の談話を、どのような政策課題や日韓関係に生かしていこうと思っているのか」との質問に対しては、
「今、世界の大きな激動期とも言える状況。アジアの経済は、大変な勢いで伸びているなかで、この地域のより安定した形が日韓を軸に、米国を加えて、日韓米の3か国で形成される。このことは、きわめて大きな意味がある」
と、やや論理が飛躍しているとも取れる答えが返ってきた。