トヨタ車事故の多くが運転ミスと米大手経済紙に報じられ、同社の株が上がっている。ただ、リコール対象になったアクセル不具合などの可能性もあるとされ、まだ流動的な要素が残っているようだ。
「トヨタ車事故は、ドライバーの運転ミスとされた!」
こんな大見出しを掲げたのは、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の2010年7月13日付サイト記事だ。
米WSJ日本版「市場での嫌疑も晴れつつある」
それによると、米運輸省が、事故車の一部を分析したところ、米議会などから指摘された電子制御の欠陥は見つからなかった。さらに、運転状況を記録したデータ・レコーダーを解析すると、いずれもアクセルは全開状態で、ブレーキは使われていなかったというのだ。
こうした点から、同省は、急加速して事故になったのは、ドライバーがブレーキと間違ってアクセルを踏んだ可能性が高いとみている。
リコール問題で、トヨタ車は、2009年はプリウスなど850万台もが対象になった。10年に入っても、アクセルペダルが戻りにくいケースが分かり、カローラなど430万台がリコール対象になっている。
もし電子系統にも欠陥が見つかれば、経営に大打撃となる可能性があった。それだけに、今回の報道は、市場に好感されている。東京株式市場では7月14日、トヨタ自動車株が買われ、円安の追い風もあって、ほぼ1か月ぶりとなる3200円台まで回復した。
ウォール・ストリート・ジャーナルの日本版ブログによると、アメリカなどの評論家がトヨタの破たんを予想していたのが一転、「市場での嫌疑も晴れつつある」。集団訴訟も数少なく、収益への打撃も比較的小さいという。ブログでは、こうした状況から「不屈のトヨタ?」との見出しを掲げている。
リコール原因の可能性など流動的要素も
同紙の報道は、英ロイター通信社なども後追い報道しており、欧米メディアでも、トヨタ再評価の兆しが出ているようだ。
その背景には、アメリカなどでトヨタ車が現地生産され、多くの人が働いている事情があるとみられる。同国では、販売されるトヨタ車の7割ほどが国内工場産で、17万人以上がトヨタ関連で働くだけに、死活問題だ。バッシングへの反発が強かったこともあってか、米ニューヨーク・タイムズ紙がトヨタ車の購入を勧めるような記事まで書くようになっている。
もっとも、アメリカの自動車産業界からはトヨタへの風当たりがまだ強く、米議会にはその支援を受けた強硬派も多い。事故車の急加速は、アクセルが戻りにくかったり、フロアマットに引っかかったりするリコール原因の可能性があるとも報じられており、トヨタが完全に汚名返上できたとは言い切れない状況だ。
トヨタ自動車の広報部では、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道について、「当局から調査結果の報告を受けていませんので、今の段階ではコメントできません」と慎重だ。リコール原因についても、「可能性の話になりますので、お答えしにくいことです」としている。