高校野球の県大会でチアリーダーを望遠レンズで撮影していた男性が、高野連からの通報で警察に任意同行を求められる騒ぎがあった。スカート内を盗撮したなどとは報じられていないだけに、警察などの対応に疑問の声も出ている。
騒ぎがあったのは、埼玉県内の球場で2010年7月12日に行われた試合の最中だった。
警察は「目的外入場」で取り調べか
スポーツニッポンによると、球場の3塁側席にいた男性が、望遠レンズ付きカメラで、選手らでなく1塁側応援席ばかりを撮影していた。これを不審に思った観客が、球場関係者を通じて大宮署に通報し、男性は、駆けつけた署員に連行された。
カメラには、チアリーダーなどの写真約1000枚もが収められていたという。
このサイト記事では、「盗撮騒動」と書かれている。が、スカート内撮影などがあったかは分からない。それだけに、ネット上では、なぜ男性が警察に任意同行されなければならないのか、疑問がくすぶっている。
そこで、大宮署に取材すると、副署長は次のように説明した。
「高野連からチアリーダーらを撮影している人がいると通報があり、事情を聞きました。逮捕はしていません。なぜ任意同行を求めたかについては、捜査中なのでお答えできません。一般論としては、スカート内盗撮なら迷惑行為防止条例違反、のぞきなら軽犯罪法違反、目的外入場なら不正立ち入りが挙げられます。必要があれば、さらに取り調べて、書類送検することになります」
埼玉県高野連の役員も、取材に応じ、警察は「目的外入場」で任意同行を求めたと聞いているとした。
「野球を見ること以外の目的で球場に入り、何らかの迷惑な行動があったということです。そのときは、うちの警備員が対応し、それらしい不審な言動があったと聞いています」
チアリーダーを撮影しただけでも警察に通報するのか。
「任意同行までされたのは、気の毒」
これについて、前出の高野連役員は、次のように説明する。
「球場は、あくまでも野球を見る場所です。チアリーダーを見るために来るのは、問題だと思っています。それを撮影してネット上に無許可で出すなら、肖像権の問題も出てきます」
こうした騒ぎは、チアリーダーが応援に加わる夏の県大会に1回はあるという。全国大会がある甲子園でも多い、としている。
チアリーダー好きはいるらしく、2ちゃんねるでは、「高校野球チア」のスレッドが都道府県ごとに立っている。
その埼玉版では、当人かどうか真偽は不明だが、警察に事情を聞かれたと告白する書き込みが2010年7月13日未明にあった。
このねらーは、警察から、撮影自体が犯罪ではなく、「目的外入場による不法侵入」と言われたとした。供述調書には、「軽犯罪法違反」と書かれたという。
しかし、警察ざたになったことには、不満を漏らした。
「そんなこと言い出せば、球場で本を読んでも、太極拳しても、目的外入場で不法侵入で逮捕になっちゃう」
ねらーは、2ちゃん界隈では有名だったらしく、称賛や非難の対象になっている。12日は、前もって仕事の休みを取って球場へ行ったというが、「いい区切りになった」と引退を明かした。ただ、目的内入場ならいいとして、カメラを持たずに行くとしている。
日大の板倉宏名誉教授(刑法)によると、目的外入場なら、軽犯罪法の第1条第32号に触れる可能性がある。名前が分からなかったり、逃げる恐れがあったりしなければ、原則逮捕しないといい、処罰されても1000円以上1万円未満の科料になるとした。今回のケースでは、起訴猶予になるのではないかという。
ただ、警察の対応には、疑問も示す。「チアリーダーの撮影目的だけなら、ちょっと厳しすぎますね。任意同行までされたのは、気の毒です。チアリーダーを見に来てはいけず、野球を見なきゃいけないというのは、変な感じもします」