人気の小泉進次郎衆院議員(29)を起用した自民党CMについて、民放テレビ局の対応が分かれている。U局やローカル局は別にして、在京キー局は、党首格ではないなどとして、流していない。しかし、キー局の姿勢に疑問を示す向きもあり、ネット上でも賛否両論だ。
弁舌でも頭角を現した小泉進次郎氏は、谷垣禎一総裁以上にメディアに露出している。そこに目をつけた自民党は、今度は、通常は党首が出る参院選向けのCMにも異例の抜てきをした。
TOKYO MXなど30局弱は流す
ところが、進次郎氏を党の顔とする作戦は、最初からつまずいた。同党の調べによると、在京キー局のすべてが、2010年7月5日現在までに放送していないのだ。流れているのは、TOKYO MXといった独立U局やローカル局の30局弱だけだ。
自民党の広報担当者は、困惑げにこう明かす。
「政党CMは、党首か党首格でないとふさわしくない、というのがキー局側の言い分でした。公選法上は問題がありませんので、お願いに行くのですが、なかなか理解してもらえません。作ったのに、流してもらえないのは、正直つらいです」
総務省の選挙課によると、党首以外が出演しても、直ちに公選法に抵触しない。出演について、規定なども特になく、放送局自らが判断することだという。
一方、民放連の放送基準には、公示の1か月以上前でも、事前運動的効果をもたらすおそれのあるものは取りやめることが望ましいとある。これだと、進次郎氏は、衆院議員として当てはまる可能性があることになる。しかし、放送基準では、「ただし、党派を代表しての出演は例外」となっている。
今回のケースでは、進次郎氏がこれに当たるかが焦点になるわけだ。
民放連によると、番組基準を作るのは、各局独自の判断になるという。そこで、キー局各局に、直接取材して聞いてみた。
「政党の代表者、またはこれに準ずる者」が原則?
取材に対し、小泉進次郎氏のCMをお断りしたと明確に答えたのが、テレビ朝日だ。
同局広報部では、放送の予定はないとして、その理由について、「政党CMの出演者については、『政党の代表者、またはこれに準ずる者』とすることを原則としています」と説明する。
また、テレビ東京は、まだ放送していないことだけを明かした。その理由については、「CMは個別スポンサーとの契約ですので、お答えしないことにしています」と言う。TBS、フジテレビは、放送するかどうかはまだ検討中だとした。日本テレビは、担当者が外出中とのことだった。
一方、すでに放送したTOKYO MXでは、その理由について次のように説明する。
「後半部分に谷垣総裁が出演しており、政党全体のCMと考えられます。進次郎さんを新人議員の顔として出す事情も、理解できます。衆院選も近いとは言えず、事前運動にも当たらないと考えています」
独立U局の関係者は、キー局の姿勢にこう疑問を示す。「ツイッターやテレビ討論では、どんどん情報が流れています。政党CMだけ敷居を高くするのは、あまり意味がありません。現に自民党のサイトやビラでは、進次郎さんや丸川珠代さんも出ているんですよ。民放連は、考え方をもっと整理すべきです」。
ネット上も、賛否両論に分かれている。
2ちゃんねるを見ると、CMに反対する意見として、タレント候補ばかりになる、報道の中立性が失われる、といった書き込みがある。一方、賛成意見としては、テレビ局の判断にならないので止める権利はない、有権者はCMだけで決めるわけではない、といったものだ。