アマゾンの電子書籍端末「キンドル(Kindle)」やアップルの多機能情報端末「アイパッド(iPad)」が国内で発売され、電子書籍の話題で持ちきりだ。一方で日本語コンテンツが少なく、書店に並ぶすべての書籍が読めるようになるのはだいぶ先になると見られている。そんな中、低価格で1冊まるごとスキャンするサービスが登場して、人気沸騰中だ。
大和印刷は1冊100円でスキャンを代行する「ブックスキャン(BOOKSCAN)」を行っている。100円で請け負うのは350ページ以下の本で、超える場合は200ページごとに100円が追加されるが、それにしても安い。利用方法は、ウェブサイトで会員登録し、申し込みと入金を済ませて、大和印刷に本を送るだけだ。
大学や出版社からの依頼も多い
スキャンしやすいように本は裁断され、1ページずつスキャナーで読み込んでいく。PDF化されたデータはメールかDVD―Rで受け取ることができ、パソコンや「アイパッド」、「キンドル」などの電子書籍リーダーで閲覧できる。パソコン内で検索したい人は、オプション料金100円でOCR(透明テキスト化)処理も可能だ。
スキャンできるのはA4サイズ以下の書籍で、折りページがある場合、そのページはスキャンできないなどの制限がいくつかある。スキャン後に書籍は廃棄処分される。
依頼主は個人がほとんどで、1回あたりの申し込み数は1冊、2冊が多い。中には1000冊以上という人もいる。書棚の本を整理したい人や、海外出張の予定がある人、視覚障害者の需要もある。テキスト読み上げツールを使うと、点字化されていない書籍も、読書を楽しむことができるからだ(ただしOCR処理が必須)。個人以外では、大学や出版社からの依頼も多い。
注文が相次いだこともあり、納品期間は6月4日まで5か月も要していた。やや改善したものの、現状でも2か月半という。人気の理由は1冊100円という破格の安さだ。実現できた秘けつは何なのか。
「現状ですと黒字化していないので、胸を張って言えるものは恥ずかしながらありません。サービス開始前に行った2000冊のテストを踏まえて算出した価格でしたが、想定よりも作業時間がかかってしまい、ひとつずつシステム化している最中です。裁断機やスキャナーのソフトなども当初は、市販品を使っていましたが、現在では、効率を考えて自社でカスタマイズし、時間短縮を模索しています。1年以内の黒字転換を目指してがんばっていきたいと思います」
と大和印刷の担当者は言っている。