就任前から「宇宙人」というあだ名が定着していた鳩山由紀夫首相だが、就任後に明らかになった「ブレ」や「ウソ」をめぐり、様々な別名が「発明」されている。麻生太郎前首相も、「できもしない約束をすることを『ハトる』という」と皮肉るなど、首相の特徴を捉えた言葉も生まれている。
最近メディアに登場した首相にまつわる「新語」の中で、特徴的なものを、いくつか集めてみた。
15分間しか、政策の立ち位置固定できない?
鳩山首相のあだ名でもっとも印象が強いとみられるのが、米ワシントン・ポスト紙がコラムの中で使用した「ルーピー」という言葉だ。「現実離れした」「頭がおかしい」「変わっている」といった意味で、2010年5月21日の参院本会議では自民党の丸川珠代議員が鳩山首相に対して「ルーピー!」と大きな声でヤジを飛ばし、与党議員が「出ていけ!」などと激怒した経緯もある。
この「ルーピー」というあだ名は米国でも使われている様子で、週刊新潮6月3日号(首都圏では5月27日発売)によると、米軍普天間飛行場の移設問題で「アメリカ側も一様に呆れている」といい、ホワイトハウス内では「あのルーピーは…」といった会話が交わされているという。
その半年近く前の09年12月21日にも、外国メディアが、判断がブレる鳩山首相を揶揄している。英フィナンシャル・タイムズ紙は、「血流停止状態の亡霊『15分男』」と題し、
「首相に批判的な民主党議員は、首相のことを『15分男』(15-minute man)と呼んでいる。15分間しか、政策での立ち位置を固定することができないからだそうだ」
と指摘している。
日米当局者に共通した隠語もあるという。産経新聞が10年3月6日に報じたところによると、鳩山首相は、「宇宙人」にちなんで「宇宙問題」(space issue)とも呼ばれているという。その意図するところは、
「『日米同盟深化』を掲げながら、『東アジア共同体構想』や『対米依存からの脱却』をぶちあげる鳩山の発言にまどわされることなく、地に足のついた議論をしようという意味」
なのだという。
日本の有権者には「サギ」、中国からは「カモ」
首相経験者が、公然と鳩山首相を揶揄したこともある。麻生太郎前首相は、2010年5月20日の派閥総会で、「新聞に『ハトる』という言葉があった」と紹介。
この日の読売新聞第2社会面の左端にあるミニコラム「USO 放送」には、
「ハトる 出来ないことを約束すること ―新語辞典(千葉・帆平)」
とあり、麻生氏は、このコラムを読んだようだ。麻生氏は、このフレーズを気に入ったらしく、5月24日に大阪府内で行った講演で、事業仕分け第1弾で3兆円を目指していた国庫返納額が6000億円にとどまったことや、普天間問題での一連の対応のブレについて
「『ハトった』ってことだ」
と批判した。
ネット上では、さらに手が込んだ例え話が流行している。2010年初頭から話題になっているのが以下で、野党の会合でも紹介されるほどだ。
日本には謎の鳥がいる。
正体はよく分からない。
中国から見れば「カモ」に見える。
米国から見れば「チキン」に見える。
欧州から見れば「アホウドリ」に見える。
日本の有権者には「サギ」だと思われている。
オザワから見れば「オウム」のような存在。
でも鳥自身は「ハト」だと言い張っている。
私はあの鳥は日本の「ガン」だと思う。
このフレーズは、ネット上ではバージョンアップが進んでいる。鳩山政権が続く限り、今後も様々なあだ名やたとえ話が創作されていくことになりそうだ。