飼い主の自宅が火事でピンチ! そんな状況を犬が「救った」動画が人気を集めている。さらに、パトカーを誘導した形の、この犬の行動が、ヒーロー並みの行為なのか、それともただの偶然なのか、も熱い議論を呼んでいる。
主役は、アメリカ・アラスカで飼われているジャーマン・シェパードのバディだ。道に迷ったパトカーの前を走り、飼い主の自宅の火事現場へ警官を導いたとして2010年4月23日には、現地警察から表彰状ももらった。
「本物のヒーローだ!」「史上最高の犬だ!」
この「お手柄」話は、CBSなどアメリカ大手TVネットワークも伝え、表彰の様子は日本でもフジテレビ系ニュースが報じるなどしている。バディの活躍を伝える、パトカーから撮った映像は動画サイト・ユーチューブ(YouTube)でも紹介された。同様の動画が多数投稿されており、なかには25万回以上再生されたものもある。
動画を見てみると、夜間、雪がところどころ残る道をパトカーが走行中、前方左側にバディがライトに映し出される。バディはパトカーに向かってトコトコと走っている途中で、ライトに気付いたのか道を右折する。右折後はスピードをどんどん上げる。パトカーもバディの後を追って道を曲がり、とにかくついていく。程なく激しく建物が炎上している現場にたどりつく。
パトカーは道に迷っており、バディの活躍で現場確認ができ、その後の消火活動に役だったようだ。バディは飼い主から助けを呼んでくるように言われていた。飼い主も無事だ。
「本物のヒーローだ!」「史上最高の犬だ!」「この犬に骨を買ってあげたい」――バディ動画には、そんなコメントが多数寄せられている。アメリカだけでなく、ドイツやイギリス、ブラジル、トルコなどからも投稿がある。日本からもコメントが寄せられており、日本語ではなく英語で書いている日本人もいる。
「犬には(誘導するなどの)抽象的思考はできない」
もっとも、称賛の声ばかりではなく、疑問の声もある。犬は別にパトカーを誘導しようとした訳ではなく、単に自宅へ戻っただけではないか、マスコミが話を面白くしただけ、という指摘がアメリカ国内からもされている。コメント欄ばかりではなく、アメリカの市民記者サイトの中には、「バディはヒーローではない」「犬には(誘導するなどの)抽象的思考はできない」と大まじめに批判する記事もある。
動物行動学や犬のしつけに詳しい日本のある大学研究者に話を聞くと、「詳しい状況が分からないのであくまで一般論」との前提で次のような解説をした。犬が「飼い主に危険が及んでいるのでパトカーを誘導した」とは考えにくい。犬にそうした思考が可能だとする研究結果はないという。パトカーのライトに驚くなどして自宅へ戻った行為が、結果的に「誘導した」形になったと考える方が自然だそうだ。
一方、もっと大らかな目でこのニュースを楽しんでもいいのではないか、という人もいる。バディの活躍を「愛犬家ならずとも、思わず目頭が熱くなるはずだ」とサイト「ワールドペットニュース」(4月24日)で報じたペットオフィス(東京)の担当者は
「専門家による犬の認識論は置いておくとして、とにかく結果的に『よくやったね』、『いいワンちゃんだね』と言ってあげていいのではないでしょうか」
と話していた。