名簿などファイルの大量流出問題で、日大でひどいセクハラが行われていた実態が分かってきた。最近退職した50代の男性教授は、2度もセクハラを指摘されながら、さらに執拗に繰り返していた。しかし、日大では、懲戒免職を公表しなかった。
「水着でビラ配りをすれば?」
「テニスでは女子生徒は全員スカートで」
セクハラの疑いが指摘された当時の男性教授は、ゼミの女子学生に対し、日常的にこんな呼びかけをしていたという。これは、日大が学生から意見聴取して出てきたものだ。
複数の女子学生を執拗にデートに誘う
この教授がセクハラの疑いをかけられたのは、今回だけではなかった。2000年~01年には、図書館の机の上に実名入りで「セクハラ教授」と落書きされた。教授は学部長に「事実無根」と答え、それ以上調査は行われなかった。
さらに、04年には、代講の女性教員に国際電話をかけたり、ゼミの女子学生を食事に誘ったりして苦情が出た。教授は今度は「もうしません」と謝罪したものの、学部長らから厳重注意を受けている。
そして、今回は、それにも関わらず、さらにエスカレートしているのだ。
08~09年に被害が報告され、複数の女子学生を執拗にデートに誘っていた。メールでは、「断ったら、あなたはゼミ疎外メンバーになります」と迫ったり、学問の「父」という字を意図的に「乳」に変えたりもしていたという。特に、「女優並みの美人」と持ち上げた学生には、「生ビール飲みたい」などと1年近くもメールで再三誘っていた。
これに対し、教授はゼミの男子学生を露骨に無視し、ゼミでは、美人を15人取るなどと女子学生ばかり優遇。学生からは、就職不安や報復の恐怖などの声が大学側に寄せられていた。
訴えを受けて、学部に調査委員会が設置され、教授は自宅待機を命じられた。その後、大学側が10年2月になって、懲戒処分を協議したことまで分かっている。
大学側「個人情報なのでお教えできない」
流出元の日大職員のファイルには、男性教授について、「懲戒免職」と書かれている。そこで、学部の担当者に聞くと、この教授が退職したことを明らかにした。しかし、その理由について聞いても、「個人情報ですので、お教えできません」とのことだった。
日大の広報課によると、たとえ懲戒免職であっても、懲戒処分は基本的に公表していないという。他大学では、早大が懲戒免職を公表しているが、日大広報課では、「私立大学ですので、その大学の就業規則によります」と釈明する。重大事件など必要性があるときにだけ、その都度公表するとしている。
今回の流出で、教員不祥事に対する日大の寛大な対応ぶりが浮き彫りになっている。
なお、情報流出については、大学の人事課職員が内規に反して内部情報を自宅に持ち帰り、ファイル共有ソフトを使おうとしてパソコンがウイルス感染したものだったことを明らかにした。1万3705人分の名簿は、OBも含む付属病院の教職員のものであることも示した。ネット上では、個人情報が出回っているが、「連絡が来ているものでは、2次被害の情報はありません」と言う。10年4月27日付で特別調査委員会を設置し、今後関係者の処分などを検討するとしている。