メガバンクがカードローンで競っている。三菱東京UFJ銀行は阿部寛さん、三井住友銀行は木村佳乃さん、みずほ銀行は井上真央さんと、いずれも実力派の人気俳優を起用したテレビCMがお茶の間をにぎわすなど、積極的な宣伝活動を繰り広げている。
「無担保」「低金利」で「スピード対応」に加え、銀行がカードを発行することの「安心感」が売りもの。2010年6月に完全施行される改正貸金業法への対応などに追われる大手消費者金融を尻目に、順調に利用を伸ばしている。
借り入れはどれも500万円が上限
三菱東京UFJ銀行のカードローン「BANQUIC(バンクイック)」の適用金利は年5.1%~14.6%。みずほ銀行は5.0%~14.6%、三井住友銀行は6.0%~12%。借り入れはどれも500万円が上限だ。
カードローンの金利は借り入れ額によって段階的になっているので、上限いっぱいの500万円を借りれば、みずほの年5%が、また10万円程度であれば三井住友の年12%が最も安い。審査の時間も短縮されて、「2、3日経っても返事がない」などということはなくなった。
3行とも貸出残高などは明らかにしていないものの、「広告効果もあって、伸びている」という。
人気俳優の「競演」でテレビCMは目を引くが、「定型商品なので、マス媒体でのPRで広く知ってもらう」(みずほ広報部)のが狙い。三菱東京UFJは「阿部寛さんのテレビCMが好評です」と話す。
一方、貸出金利の引き下げや、年収の3分の1までしか借りられない総量規制の導入、過払い金の返還問題の「3重苦」で、消費者金融の業績低迷は深刻だ。金利を比べると、三菱UFJ系のアコムは年7.7%~18.0%、三井住友系のプロミスは7.7%~17.8%で、ともに借り入れの上限は300万円。みずほが経営支援する信販会社のオリエントコーポレーションのカードローン「CREST」の金利も6.0%~18.0%と、全体的には銀行よりもまだ高いが、下限はほとんど変わらなくなってきた。
メガバンクはどこも、「消費者金融とは顧客層の棲み分けができている」と口を揃えるが、消費者金融も融資審査を厳格化しており、「取り込みたい客層はほとんど変わらなくなっている」(消費者金融の関係者)のが現状のようだ。
メガバンクが消費者金融に「助け舟」を出した
メガバンクの積極推進もあって競争が激化するカードローンだが、じつは消費者金融にとっても、メガバンクがカードローンを伸ばすほど収益アップにつながる。それは、三菱UFJの「BANQUIC」はアコムが、三井住友はプロミスが、みずほはオリコがそれぞれ保証会社になっているからだ。
カードローンを申し込んでも、審査の段階で保証会社の保証が下りなければお金は借りられない。つまり「BANQUIC」でいえば、実質的に借り手を審査しているのはアコムというわけ。これであれば消費者金融には保証料が入るから、銀行のカードローンが伸びれば、おのずと消費者金融も儲かるという構図になる。メガバンクが消費者金融に、いわば「助け舟」を出した格好だ。
とはいえ、消費者金融の「本業」である融資は伸びない。たとえば、三菱UFJ系のアコムの成約率は09年12月時点で34.7%。08年12月と比べて7.8ポイントも落ち込んでいる。審査の厳格化が原因だが、銀行と消費者金融の審査基準が「ほぼ同じ」(メガバンクの関係者)なのだから当然。このままでは、メガバンクの保証会社として食べていくことになりかねない。