企業の社会的貢献(CSR)活動はすっかり定着してきたが、新たな動きも出始めている。2010年のCSR活動のキーワードは「生物多様性」と「子ども」。10月に、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開かれることもあって、生物多様性の保全に関する方針や長期目標を策定する企業が、製造業を中心に増えているという。
一方、「子ども」については、教育や医療、少子化の問題、また発展途上国や自然災害地などへの生活支援などの活動への関心も高まっている。
CSRも「トレンド」重視?
企業のCSR活動は、製品やサービスの安全性や品質の向上や職場環境の整備、女性や障がい者の社会進出支援、環境経営や地域のボランティア活動、社会福祉施設や慈善団体などへの寄付行為などさまざまだ。ただ、景気低迷に伴う業績の悪化で、最近はどの企業のCSR活動費(予算)も細りぎみということではあるが、予算や事業内容の優先順位などを見直しながら取り組んでいる。
その年のトレンドや話題を活動に反映するのは、CSRに対する理念や企業価値の向上を、効果的に実現したい企業の思惑がにじんでいる。
そうした中で、2010年のキーワードは「生物多様性」と「子ども」。「生物多様性の保全」については、COP10の開催に加えて、07年に定めた環境省ガイドラインへの対応もあって、重視する企業は多い。「生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用状況」について、企業としての考え方や方向性を示す必要があって、「何かやらなくては」という事態に迫られたことがある。
すでに取り組んでいる企業もあり、たとえば医薬品のツムラは漢方薬の原料となる生薬を取り扱う関係から、栽培する生薬が周囲への生態系に影響しないよう、栽培指導者に対する教育に力を入れている。また、栽培地域への貢献活動として高知県で「協働の森作り事業」も実施している。
さらに、電気機器のリコーは環境NPOなどとの協力関係を築き、1999年から「森林生態系保全プロジェクト」を展開。現在、フィリピンやガーナでの熱帯雨林の回復やロシア北限のトラ生息域タイガの保全、沖縄のやんばる森林保全など、世界8か所で保全活動を行うなどの実績を残している。