サッカー日本代表が東アジア選手権で惨敗し、一時は岡田武史監督(53)の解任論まで出た。続投が決まったようだが、スポーツ紙では、同じメンバーで決定力不足などの同じ過ちを繰り返していると厳しい論調が多い。これでは、本番のW杯では、目標のベスト4どころか1勝すら難しいのか。
「岡チャン 不合格 決断セヨ サッカー協会」
スタンドには、こんな過激な横断幕が一部サポーターらの手で掲げられた。東京・国立競技場で2010年2月14日に行われた東アジア選手権の韓国戦後に見られた光景だ。
韓国の主力を欠く「2軍」?メンバーに負ける
スポーツ紙各紙によると、ホーム開催で過去最低の3位という結果に、4万人余の観衆からも、解任要求を含むブーイングが巻き起こったという。
サポーターの不満を代弁するように、各紙の岡田ジャパンへの評価は厳しい。
サンケイスポーツは、「サポーター我慢の限界 岡田監督にクビ要求」「評論家もバッサリ『ひどい試合』」といった大見出しを掲げた。また、スポーツニッポンは、「韓国に1-3惨敗 岡田ジャパン解体へ」といった意味ありげな見出しを打っている。
各紙では、韓国は、海外組の主力を欠く「2軍」メンバーだったとして、それでも勝てなかったことを酷評した。試合内容では、FWの岡崎・玉田両選手がシュートを計3本しか打たないなど、決定力不足を依然克服できていないなどと指摘。つなぐ意識が強すぎて、悪いクセが出たとの岡田監督のコメントを紹介している。また、DFの闘莉王選手が後ろ蹴りでレッドカードを切られて退場するなどして、守備でも崩壊したとしている。
評論家からも解任論が出ており、セルジオ越後さんは、日刊スポーツのコラムで、「ジーコ監督の時より弱い」として、監督交代を考えた方がよいと述べた。各紙の試合直後のアンケートでは、9割が解任を支持したとされ、ヤフーが15日から始めた意識調査でも、7割が新監督を起用すべきと答えている。
解任論に対して、岡田監督は会見で、進退問題は日本サッカー協会が判断することで、自身は「選手がついてきてくれる限り、投げ出すつもりはない」と答えている。MFの中村俊輔・長谷部両選手の海外組が入ってくれば、もっとよくなると理解を求めている。
スポーツ紙の酷評は、話題作り?
日本サッカー協会の犬飼基昭会長も、試合内容を批判しながらも、W杯まで4か月ではリスクが大きすぎるとして、岡田武史監督の解任を否定した。
スポーツ紙では、その後のトップ会談で一波乱もありうるとの見方も報じられ、早くも元日本代表監督のイビチャ・オシム氏を含めて、複数の監督候補が取りざたされた。しかし、犬飼会長は2010年2月15日、岡田監督と緊急会談し、全面支持することを伝えた。
とはいえ、サッカー日本代表は、監督のすげ替え論議が高まるほど弱くなってしまったのか。
サッカージャーナリストの後藤健生さんは、あくまで一時的な戦力ダウンだとみる。
「コンディションが悪かったんですよ。Jリーグでは、シーズンオフで各チームがキャンプをしていますが、代表は2月から試合をスタートさせなければならず調整が難しい。岡田監督が『選手が元の状態に戻るのに1週間ぐらい遅れた』と言っていたのは、コンディションの調整が遅れたということです」
韓国は、遠征試合を抱えていたので、日本より3週間ほど早くキャンプをスタートしていたという。主力が3、4人欠けているが、2軍とは言えないともいう。スポーツ紙の酷評については、監督を挑発して話題作りをした結果だとみている。
岡田ジャパンについては、MFの稲本潤一選手を後方のボランチとする使い方を発見するなど、収穫もあったという。決定力不足は、稲本らの中盤を生かして、走るサッカーをすれば克服できるとみている。
そのうえで、後藤さんは、岡田監督について、サッカー協会が解任する必要はないとした。
ただ、コンディションの調整失敗で、FWの平山選手ら新戦力を試す機会がなかったことなどが失敗に挙げられるという。
「本番でも、コンディションをいかによくするかが課題でしょうね。初戦のカメルーン戦では、戦力が劣っていても、試合会場となる高地での対策がうまくいけば挽回の余地があります。ベスト4は、あくまで目標であり、予想やノルマではありません。グループリーグで1勝できれば成功と言えますし、突破すれば大成功の内に入ると思います」