パチンコ業界では年間100以上の新型遊技機が登場するが、そのうち8割が「版権モノ」と言われる機種で、ヒットアニメが主力になっている。パチンコ化・パチスロ化の許諾料は最高10億円などと囁かれ、機種化されれば過去に販売された原作漫画、DVDが再ヒットする。経営悪化に苦しむ出版界にとっても実にオイシイ話しなのだが、なぜか、ハリウッド映画にもなった「ドラゴンボール」は機種化されていない。
「ドラゴンボールはなぜパチンコにならない?」――そんな議論がネットで活発になったのは、「週刊東洋経済」(2010年2月13日号)のパチンコ産業に関する特集。パチンコ業界で「版権パチンコ」が集客の要になったのは、90年代後半、パチンコ機に液晶が搭載されてからだ。
そして、多くのアニメ作品がパチンコ機として登場したものの、ここに来てネタ切れ。超人気の「ドラゴンボール」などは、原作者が許可を出していない、というのだ。
これまでパチンコ・パチスロ化された人気アニメは、「あしたのジョー」「ルパン三世」のほか、「新世紀エヴァンゲリオン」「北斗の拳」「ベルサイユのばら」「超時空要塞マクロス」「キン肉マン」「シティーハンター」「創聖のアクエリオン」など多数ある。
いずれも名作アニメで、ファンならずともどんなパチンコなのだろうかと興味を惹かれる。この中で「北斗の拳」機種は累計で60万台売れた。「エヴァンゲリオン」は累計90万台で、3~5万台売れればヒットと言われた04年だけで12.5万台売れた。
その効果はパチンコ台のヒットだけに留まらない。テレビCMや雑誌広告などでアニメ関連の新機種が紹介されると、過去に発売された原作漫画や、DVDが売れ、レンタル市場も活気付いた。テレビCMで「創聖のアクエリオン」が放送されたことをきっかけに、2年半前に出された過去の主題歌が、オリコンランキングのベストテンにいきなり登場したことは語り草になっている。ただ、ここのところアニメをパチンコ化する許諾料が高騰してきた。5年前なら人気の高い版権の許諾料は1億円程度だったが、今は10億円以上になって、パチンコメーカーも悩んでいる、と「週刊東洋経済」は書いている。
「びっくりぱちんこ あしたのジョー」を出しているパチンコメーカー大手の京楽産業広報は、アニメを題材にしたパチンコ機が業界の主力になってきたのは、アニメの知名度が高く、パチンコファンはもちろん、普段パチンコをしない人でも興味を持ってもらえるから、という。また、アニメで使われていたアクションがパチンコのゲーム性と合わせやすく、ストーリーも面白くしっかりしていることで、遊技性が高くなりお客に満足してもらえる、ということだそうだ。
「パチンコ台化の予定は現在のところございません」
一方で、アニメをパチンコ化する許諾料が高騰していると報じられていることについては、むしろ逆の現象が出ていると説明する。
「パチンコ化すれば、過去に発売された原作やDVD、CDが再び売れ出すことを版権側は知りました。そのため、二次的効果を期待し一方的な許諾ではなく、タイアップの形が増えています」
つまり、許諾料は逆に抑えられる方向にあるのだという。
そんな中、超人気アニメの「ドラゴンボール」はなぜパチンコ台化されないのか、とネットで話題になっている。「週刊東洋経済」には、遊技メーカー幹部の話しとして、
「『ドラゴンボール』は各社が打診したが、原作者の鳥山明氏が首を縦に振らない」
と書かれている。
京楽産業広報によれば、「ドラゴンボール」は魅力的な作品で、出せば大きなヒットが期待できるため、多くのメーカーが是非欲しいのは間違いない、としたうえで、
「パチンコ化するには、原作者や出版社、その他もろもろ著作権者全員の許可が必要ですので、その中の一人でも反対すればパチンコ化はできません」
と明かす。ネットでは、
「鳥山氏が自分の作品を『大人のギャンブル』に使われる事を嫌っているのだろう」
「あくまで子供向けの作品だからイメージが壊れると拒否しているのではないか」
などといろいろ推測が出ている。
「ドラゴンボール」が連載されたのは集英社の「週刊少年ジャンプ」。集英社広報にパチンコ化について聞いてみたところ、
「『ドラゴンボール』のパチンコ台化の予定は現在のところございません」
という回答だけが返って来た。