若者にとって、お金がないのに無理してブランド品を持つのは、かっこ悪いことらしい。安い服にブランドバッグを合わせる「一点豪華主義」がはやったのは一昔前のこと。いまでは消費の感覚自体が変わってしまったらしい。
バブル期以降、ブランド品を持つことがステイタスで、多少の無理をしても買うという消費者がブランドの成長を支えてきた。若い女性の間では「一点豪華主義」と呼ばれる、安い洋服にブランドバッグを合わせるファッションがはやったりもした。海外ブランドにとって日本市場は「ドル箱」だった。
「ブランド神話」崩壊、安くていいものがあれば事足りる
ところが2008年頃から、スウェーデン発のカジュアル衣料品店「H&M」やアメリカの「フォーエバー21」、日本の「ユニクロ」といった、安い「ファストファッション」が出てくると、「ブランド離れ」が加速した。そもそも、「みんなが持っている」とか「ステイタスだ」という理由でブランド品を買っていた人にとって、収入が減った今、安くていいものがあれば事足りるということのようだ。
ブランド離れは若者の間で顕著だ。20歳代の女子大学生は、
「ブランドバッグを買ってもらったことがありますが、仰々しい感じがして、自分の服とも合わないような気がして、あまり使っていません」
という。
別の20歳代女子大生は、
「ビニールでできているのに財布で6万円もして、値段と品質が見合っていないと思うので買いません。品質がよくて手ごろな値段のものが他にありますから」
と話している。
若い男性にとって、ステイタスだった車についても似たような傾向が出ている。
メディアインタラクティブ(東京都渋谷区)が、車を持っていない都市部在住の15歳~34歳男女に調査を行ったところ、近い将来に自家用車を「ぜひ購入したい」と答えた人は25%にとどまり、「特に購入したいとは思っていない」(36%)の方が上回った。
若者がものを買う条件は「バカにされないこと」
車を買わない理由は、「利用することがほとんどない」「(購入・維持の)お金がかかるから」「車より他のことにお金を使いたい」といった「お金」の理由が多い。また、昔のように車を持つことがステイタスであると考える人は減っているようで、同社は「車を所有しても自慢できるとは思わず、中古車でも恥ずかしくない、との傾向が出ている」としている。調査期間は2009年2月20日~26日に行い、1174人の有効回答を得た。車は持っていないが免許はある人は54%だった。
「『嫌消費』世代の研究――経済を揺るがす『欲しがらない』若者たち」(東洋経済新報社)の著者でジェイ・エム・アール生活総合研究所の松田久一代表は、
「不景気で収入が減っているからブランド品や車を買わないという人もいるが、20歳代の場合、収入に関わらず、消費を抑制する傾向にあります」
と話している。
消費をしないわけではないが、他世代に比べて収入に見合った消費をしない傾向を松田さんは「嫌消費(けんしょうひ)」と呼んでいる。
ものを買うポイントになるのが、「自分の趣味に合って、節約に貢献してくれて、皆から利巧と思われること」の3つの条件が揃っていることだ。
「3つ目は砕いていうと『バカにされないこと』で、これが重要です」
20歳代女性は依然としてブランド品への関心は高いが、「無理しているように見られる」「空気を読んでいない」と友達に思われるのが嫌で買わない。どうしても消費は抑制されるのだというわけだ。