「ファッションセンターしまむら」の店舗拡大に対し、新潟県加茂市が狙い撃ちで条例を作って刑事告発したことに、賛否両論が出ている。国交省では、建築基準法上は問題がないとするものの、異例な条例の意図に当惑している様子だ。
「建築基準法に基づく条例ですが、結果として、しまむら阻止のためということになりますね」
新潟県加茂市の総務課では、2009年7月に施行した建築物の制限に関する条例の意図をこう明かす。しまむら「加茂店」の店舗拡大計画について、「狙い撃ち」であったのを認めた形だ。
「売り場が増えると商店街が壊滅する」
しまむらは、大規模小売店舗立地法に基づき、県に対し1月に売り場面積の拡大を届け出て、計画の存在が分かった。倉庫を店舗に転用し、約980平方メートルの売り場を約1130平方メートルにするというものだった。
これに対し、市や地元商店街などでは、「市内に7つも大型店があるのに、これ以上売り場が増えると商店街が壊滅する」と反発。しまむらに計画の撤回を求めてきた。しかし、応じなかったとして、前出の条例を作って、計画を阻止しようとした。
一方、県では、大店立地法上は問題ないとして、しまむらに「意見なし」との審査結果を9月に回答した。ただ、「地域に溶け込んでもらわないと困る」(商業振興課長)として、「地元と協議して下さい」という付帯意見を付けた。
ところが、しまむらは、10月に店舗拡大に踏み切ったため、市では、500平方メートル以上の店舗の売り場面積拡大を禁じた条例違反と判断。12月8日になって、さいたま市のしまむら本社を加茂署に刑事告発した。
加茂市では、条例に罰則があるので行政訴訟ではなかったとしている。条例では、最高50万円の罰金を定めている。ただ、売り場を元に戻す規定はなく、市では、「罰金を支払っても元に戻さなければ、民事訴訟も検討したい」とあくまで強気の構えだ。
しまむら企画室長「なぜなんだろう」
刑事告発してから、加茂市には、市民らから賛否両論の様々な意見が寄せられている。中には、「話し合いで解決を」との声もあるという。
告発されたしまむらは、困惑しているようだ。
企画室長は、取材に対し、「市と警察からは、連絡がありません。新聞で知っているだけなので、何とも話しようがないです」と話す。
地元の反対でも売り場拡大に踏み切ったことについては、「条例は、県に申請した時点ではありませんでした。法に基づいて、適正な手続きを踏んだつもりです」と釈明する。そして、こう不信感をぶつけた。
「そんなに簡単に、条例を作れるものなんでしょうか。すでに営業した店を拡大しただけで、それも2、3倍にしたわけではありません。なぜなんだろうという気持ちです」
新潟県の商業振興課長は、加茂市の狙い撃ちについて、大店立地法の規制とは別との立場だ。「いい悪いを言う立場ではないので、何とも言えません」と言う。
国交省の市街地建築課では、「条例自体は、建築基準法に基づくもので、自治体の権利として認められています」と説明する。規制内容についても珍しくないという。
もっとも、狙い撃ちについては、「特殊な案件」だとみる。
「過去に、特定のところを意図的に対象にしたケースは、聞きませんね。一社が計画を出しているのに、条例を作っていいのかどうか。最後は、裁判所の判断がないと分からないと思います」