「はっきり言って詐欺」 暫定税率維持に批判強まる

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   民主党がマニフェストに掲げた目玉政策「ガソリンの暫定税率廃止」が一転して「維持」に向かおうとしている。小沢一郎幹事長の要求に対して、鳩山由紀夫首相は例によって「公約も大事だし、党の要望も大事」と煮え切らない。政府は公約違反との批判をかわすために、「暫定」を廃止しつつ名目を変えて税率を維持する方法の検討を始めたとされるが、「詐欺みたいな話だ」とさらなる批判が噴出している。

   ガソリンの暫定税率はオイルショック後の1974年、道路整備の財源を確保するために「暫定的」に導入されたが、そのまま30年以上も維持されてきた。本来のガソリン税に加えて、1リットルあたり約25円が上乗せされている。2008年夏をピークとするガソリン価格の高騰を背景に「暫定税率を廃止せよ」という気運が高まったのをうけ、民主党は08年1月に「ガソリン値下げ隊」を結成、大々的に廃止キャンペーンを展開した。09年7月に発表したマニフェストでも目玉政策の一つに掲げていた。

「俺たちの崇高な理念や今までの取組みは何だったんだ」

   ところが2010年度の予算編成を目前に控えた12月16日、民主党の小沢幹事長が鳩山首相に渡した要望書に書かれていたのは

「現在、石油価格は安定しているので、ガソリンなどの暫定税率は現在の租税水準を維持する」

というマニフェストに反する要求だった。さっそくマスコミや野党からは「公約違反」との声があがったのも当然だ。

   週刊朝日の山口一臣編集長は12月18日に放送されたテレビ朝日の情報番組「スーパーモーニング」で、

「もともと道路を作るための道路特定財源として上乗せされていた暫定分。道路を作らないわけなので、なぜ車を運転する人たちがその分の税を負担しなければならないのかというところは、きちんとした説明がないと納得できない」

と不満をあらわにした。民主党内からも異論が出た。赤松広隆農水相は17日の会見で、

「簡単に今度、現在の税率維持と言われちゃうと、『じゃあ、俺たちの崇高な理念や今までの取組みは何だったんだ』みたいな思いが、正直言って、ないわけではありません」

と突然のマニフェスト改変に対して批判を口にした。

仕組みは廃止し、別の形で税率を維持する?

   もっとも新聞の社説をながめると、暫定税率の維持に対してはおおむね肯定的だ。日経新聞(17日付け)は「ガソリン税の暫定税率の維持を打ち出すなど、財源とのバランスを重視した部分は評価できる」と書き、朝日新聞(18日付け)も「不況による大幅な税収見込み減や地球環境への悪影響を考慮すれば、現実的と言えるのではないか」と評価している。読売新聞や毎日新聞も暫定税率維持に賛成の立場だ。

   しかし、小沢幹事長という内閣の外にいる人間が強引に政策変更を迫っていることや、鳩山首相の明確な説明が示されないことに対して、「著しく透明性に欠ける手法」(朝日)と批判を浴びせている。

   鳩山内閣では「公約違反」という批判をかわすため、暫定税率というこれまでの仕組みは廃止しつつ、別の形で税率を維持する方法が検討され始めたと伝えられる。藤井裕久財務相も17日の会見で

「私達の案は、まずは仕組みとしての暫定税率は廃止するということ。民主党の言っていることも、結局維持するということは仕組みの問題ではなく、入っているお金をどうするかという問題だと思う。だから、概念的に全然違うことを言っているとは思っていない」

と述べ、暫定税率を廃止したうえで現在の2.5兆円という税収を維持する方策を探ることを示唆した。だがこのような言い訳に対しては「看板の掛け替えにすぎない」との批判が強い。週刊朝日の山口編集長は

「はっきり言って詐欺みたいな話だ」

と怒りを爆発させる。同じ番組に出演していたジャーナリストの大谷昭宏さんも

「こういうインチキばかりしていると、国民が『なんだ、あのマニフェストっていろいろカラクリがあって』ということになる」

と激しく批判した。

   そんななか、時事通信が18日に発表した内閣の支持率は46.7%と、ついに5割を割り込んだ。前月調査から7.6ポイント減った一方で、不支持率は前月比7.5ポイント増の30.3%と初の3割台に達した。不支持の理由として目立ったのは、鳩山首相の指導力不足だ。暫定税率の問題でも対応を誤れば、さらに支持率が落ちるのは明らかだろう。

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