行政刷新会議の事業仕分けで、次世代スーパーコンピューター(スパコン)の開発予算が「大幅削減」と判定されたことが波紋を呼ぶ中、長崎大学などの研究チームが国内最速のスパコンを開発し「スパコンのノーベル賞」とも呼ばれる賞を受賞した。驚くべきはその開発費用で、わずか3800万円。通常は開発に数百億単位に費用が必要とされるスパコン開発のあり方をめぐり、議論が起こることになりそうだ。
「日本最速」を記録したスパコンは、長崎大学工学部の浜田剛助教を中心とするグループが開発。158テラフロップス(1秒に158兆回計算)という性能を実現した。これまでの国内最速は、NECが海洋研究機構に納入した「地球シミュレータシステム」の122.4テラフロップス。今回の記録はこれを上回るものだ。
「スパコンのノーベル賞」を受賞
11月20日まで米オレゴン州で開かれていた国際学会「スーパーコンピューティング2009」では、「スパコンのノーベル賞」とも呼ばれる「ゴードン・ベル賞」(価格・性能部門)を受賞している。国内からの同賞の受賞は06年以来3年ぶりの快挙だ。
今回の研究で特筆すべきは、開発コストの低さだ。通常、スパコンの開発には数十~数百億円単位が必要とされるが、今回のスパコンの開発にかかったのは、わずか3800万円。ゲームの画像処理用に発展してきた「GPU」と呼ばれる集積回路を、大量に組み合わせたのがその理由だという。市販のGPUは単価は安いものの、これまで一度に大量に組み合わせることは複雑で困難だとされてきた。ところが、研究チームは「マルチウォーク法」と呼ばれる方法を開発し、380基を並列に動作させることに成功。「日本最速」を実現した。