鳩山由紀夫首相が「ブーメラン現象」に苦しんでいる。「秘書が犯した罪」に関する過去の発言が自分に跳ね返ってきて、偽装献金問題で窮地に追い込まれているのだ。マスコミの論調も厳しく、「秘書が逮捕される事態になれば、辞任せざるをえないだろう」との見方も出ている。
鳩山首相の献金問題は2009年11月4日の衆院予算委員会でも取り上げられた。特に厳しく追及したのが、自民党若手の柴山昌彦議員だ。弁護士資格をもつ柴山議員は、03年7月に鳩山首相が配信したメールマガジンの一節を引用して責めたてた。
「総理は平成15年7月23日のメールマガジンで『秘書が犯した罪は政治家が罪を受けるべきなのです』と述べておられます。あなたはどう責任をとられるのですか?」
「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべき」と書いていた
このメルマガが配信されたのは、社民党の辻元清美議員らが秘書給与流用事件で逮捕された直後。逮捕者の中には土井たか子党首の元秘書も含まれていた。そのことについて、鳩山首相は「政治家と秘書は同罪」としながら、次のように書いているのだ。
「政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば『あれは秘書のやったこと』と嘯(うそぶ)いて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです。政治家は基本的に金銭に関わる部分は秘書に任せており(そうでない政治家もいるようですが)、秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」
こう厳しい言葉を投げつけたうえで、「土井党首は身を退かれるべきではないでしょうか」と辞任を促している。この言葉が6年後、ブーメランのように鳩山首相のもとに戻ってくることになった。
予算委員会で鋭い追及を受け、鳩山首相は
「秘書が犯したことだから議員は関係ないんだというような弁明をすることは潔く思っていなかった。それは言うまでもありません。このことは私自身に適用できる話だと思っています」
と答えざるをえなくなった。しかし具体的な事実関係についての質問には、捜査中であることを理由に明言を避けている。秘書の刑事責任が確定した場合の責任の取り方についても「仮定の話に答えるのは控えさせていただきたい」とかわした。