完全失業率が史上最悪を更新するなか、従来とは大幅な政策の転換を掲げる民主党による新政権が発足した。新政権では、労働者派遣制度についても大幅な見直しを掲げており、業界団体からの反発が高まっている。一方、企業アンケートでは、派遣社員に対する余剰感が高まっているとの結果も出ており、新政権による政策が本格化すると時を同じくして、派遣社員の雇用減少に拍車がかかりそうな様相だ。
非正規社員の比率を上げる回答が半数近い
新政権の中核を担う民主党は、2009年8月の衆院総選挙の政権公約(マニフェスト)の中で、新たな専門職制度を設けた上で、原則として製造現場への派遣を禁止するほか、「日雇い派遣」「スポット派遣」も原則禁止することを掲げている。社民、国民新党との「3党連立政権合意書」の中にも、この内容は盛り込まれたことから、この政策が推進される可能性が高い。
ただ、「派遣労働を禁止することは失業者を増やすことだ」との指摘も根強いほか、業界からの反発も大きい。例えば製造請負・派遣業界団体の日本生産技能労務協会(東京都港区)は、
「規制強化が実行された場合、影響を受ける派遣労働者の見込み数は66万人。派遣労働者の多くが、労働者派遣制度を必要としている」
などと訴え、11万8013万人から規制強化に反対する署名を集めた。人材派遣会社でつくる日本人材派遣協会(東京都千代田区)も57万人の署名を集めている。両協会とも、集まった署名を新政権の厚生労働大臣に手渡したい考えだ。
ただ、現実の雇用情勢は、政策論議の一歩先を行っている様子だ。09年8月28日に発表された09年7月の完全失業率(季節調整値)は5.7%、有効求人倍率(同)は0.42倍で、いずれも過去最悪の数値となったが、さらに、派遣労働者に対する逆風がさらに強くなりそうな調査結果も出た。
求人広告を企画・発行する「アイデム」(東京都新宿区)では、09年7月、企業経営者に対して「今後、自社の正規雇用と非正規雇用のバランスをどうするのか」についてアンケートを行い、999の有効回答を得た。このうち、派遣社員を雇用している企業は147社で、その45.6%が、正社員・正職員以外(非正規社員)の比率を上げると回答。「非正規化」が今後も加速することを裏付けた形だ。