ナチス・ドイツの独裁者、アドルフ・ヒトラーの著作「わが闘争」が日本でマンガ化され、売れ行きが好調だ。現在でもドイツでは出版が禁止されている「問題作」だが、読者の間から批判めいたものはほとんどないという。
ドイツ国内では「わが闘争」の出版は禁止
「わが闘争」は、ヒトラーがクーデター(ミュンヘン一揆)に失敗して収監されていた刑務所の中で部下に口述した内容がまとめられたもので、上巻は1925年、下巻は翌26年に発売された。ヒトラーが33年に政権を取ると、「ナチス党のバイブル」として、ドイツ国内ではベストセラーを記録した。終戦後、日本や欧米各国では翻訳版が発行されたものの、ドイツ国内の新刊書店では、現在でも「わが闘争」を手に入れることはできない。
第二次世界大戦直後の連合国の方針で、ヒトラーの著作物はドイツのバイエルン州が管理することになっており、「わが闘争」の著作権も同州が管理している。ドイツ国内では、「ネオネチの宣伝に使われる」「ホロコースト被害者の感情を傷つける」という理由で、同州が「わが闘争」の出版を禁じているのだ。
日本国内では、著作権法に「1970年以前に発行された著作については、発行から10年間、日本で翻訳されなかったものは自由に翻訳できる」との規定があることから、1973年に角川文庫から文庫版が発売されている。ただ、この文庫版の存在が広く知られている訳ではないだけに、今回のマンガ化で、この「わが闘争」に、にわかに話題が集まっているのだ。