日本人に多い「胃がん」は、「ピロリ菌」の感染と密接な関係にあることが近年の研究でわかってきた。胃がん予防には抗生物質による除菌が効果的だが、1回目の除菌では成功率が70%程度にとどまり、2回、3回と行わなければならない。副作用や金銭面の問題もある。そこで注目されているのがヨーグルトなどに含まれている「LG21乳酸菌」だ。ピロリ菌の活性を抑える効果があり、薬剤療法と併用することで除菌効果を高めることができるという。
日本人の2人に1人がピロリ菌に感染
除菌療法の問題点について説明する東海大学医学部高木敦司教授
日本人の2人に1人がピロリ菌に感染し、50歳以上では7~8割にものぼると言われる。慢性胃炎、胃かいよう、十二指腸かいようをまねくだけでなく、ピロリ菌感染による慢性胃炎から胃がんになるケースもある。厚生労働省の研究班が全国4万人を対象に行った調査でも、感染経験者は全くピロリ菌に感染したことがない人に比べて、胃がんのリスクが5~10倍になることが報告されている。胃がん予防のためにも、感染している場合には除菌することを関係学会は勧めている。
日本でもっとも多く行われている除菌方法は胃薬1種類と2種類の抗生物質を投与する「3剤療法」だ。1日2回、1週間にわたって服用する。胃かいようと十二指腸かいようの患者に限っては健康保険が適用されている。
しかし、この方法でネックになっているのは、1回目の除菌の成功率が70%程度であること。感染者によって除菌に使われる抗生物質クラリスロマイシンに耐性のあるピロリ菌(クラリスロマイシン耐性ピロリ菌)が存在する。これが失敗要因のうち3分の2を占める。残りの3分の1は、薬を最後まで飲まないなど患者側の問題だ。失敗したら抗生物質を替えて2回、3回の除菌が必要になるが、強力な抗生物質を使うので下痢、味覚障害などの副作用の問題が出てくる。保険適用内とは言え、金銭面の心配もある。
そんななか、ピロリ菌の抑制に有効だと注目されているのがヨーグルトなどに含まれている「LG21乳酸菌」だ。
LG21乳酸菌併用で、成功率89.3%に上昇
東海大学医学部高木敦司教授は、LG21乳酸菌にはクラリスロマイシン耐性ピロリ菌を含むピロリ菌の活性を抑える効果があることを突きとめ、2009年6月に行われた米国消化器病学会で発表した。
117人のピロリ菌陽性患者のうち、除菌療法を行うA群と、LG21乳酸菌の摂取を併用するB群に分けた。B群はLG21乳酸菌が入ったヨーグルト90グラムを1日2回、4週間にわたって食べた。はじめの3週間はヨーグルトだけ食べ、残りの1週間はヨーグルトと除菌療法の両方を行った。
結果は、A群の除菌成功率が77.8%、B群は89.3%だった。また、117人のうち22.5%がクラリスロマイシン耐性ピロリ菌に感染していて、この菌の除菌成功率はA群が18.8%だったのに対し、B群は60.0%と大きく差をつけた。
高木教授はB群の成功率が高かった理由について、
「LG21乳酸菌がクラリスロマイシン耐性ピロリ菌を抑制する効果があると言えます。また、除菌前の3週間、LG21乳酸菌を摂取していたことで菌の量が減って、3剤療法の効果が出やすかったのではないか」
と推測する。
また、感染していない人もLG21乳酸菌が入ったヨーグルトを食べることで、胃の健康を保つことができそうだ、とも話していた。