仙台で「乱交パーティー」が摘発されたことに対し、ネット上で疑問が相次いでいる。被害者がいないし、個人の趣味では、と反発の声が強いのだ。ネット上で情報が氾濫している状況もあるのに、なぜ警察は摘発したのか。
警察「不特定多数の者が、公然と性行為」
「趣味の会」。摘発された乱交パーティーの主催者は、こう称していた。
ところが、宮城県警は2009年6月17日夜、この「趣味」に突然踏み込んだ。仙台市青葉区のマンションの一室に捜査員が入り、男女の客がコトに及んでいる現場を押さえたのだ。
客の男性会社員(47)と女性店員(23)を公然わいせつの現行犯で逮捕。それを手助けしていた主催側の無職男性(31)と女性会社員(42)も、公然わいせつ幇助の現行犯だった。主催側では、ヘルス嬢3人も、その場にはいなかった部屋所有の風俗店経営者(46)も、それぞれ公然わいせつなどの疑いで逮捕された。逮捕者は計8人で、ほかに、女性1人、男性8人の客がいた。
パーティーは、男性が1万5000円、女性が無料。携帯サイトの掲示板で「大人のパーティー」と募り、1回10人前後で、月に5~8回開いていたという。
この摘発内容が報じられると、ネット上では、次々に違和感を訴える声が上がった。2ちゃんねるでは、「乱交パーティーって犯罪なの?」「誰が被害者なの?」との疑問や、「マンションの中でやってるのに」「個人的な趣味」との指摘が書き込まれている。
コトの最中に踏み込まれた客は、驚いただろうが、2人とも容疑は認めている。逮捕された主催側の6人は、「やっていたが、罪とは思っていなかった」などと供述しているという。
ネット上で出ている反発の声に対し、仙台中央署の副署長は、こう理解を求める。「逮捕したのは、マンションの一室とはいえ、不特定多数の者が、公然と性行為をしていたからです。参加者が、ほかの全裸の参加者を見ることができる状態でした。ストリップショーでも、性行為を客に見せるようであればダメです。お金を取ったこととは、関係ありません。知人同士でも、状況によっては公然わいせつに問われます」
現状では、乱交パーティーは御法度
仙台中央署によると、摘発のきっかけは、匿名での通報だった。マンション12階のため外からは見えず、声がうるさいという苦情も聞いていないという。
乱交パーティー情報が氾濫する中での摘発については、副署長は、こう説明する。
「ネット上で情報があるからといって、他人の家に勝手に踏み込むことはできません。裏付けがないと、裁判所から逮捕令状が取れないからです。今回は、通報があって、確実にパーティーが開かれることが分かったから摘発しました」
今回の事件をブログに書いた奥村徹弁護士は、摘発の理由について、1回のパーティーで16人もの参加者がいたことなどが大きいとみる。
「特定の人たちだけの秘密結社なら話は別ですが、今回は、営利目的で客をたくさん増やそうとしています。ネットを使って募集しているので、『不特定』とみなされます。また、5、6人もいれば、『多数』とみなされてしまいます。こうしたことは、判例でも出ていますね。また、わいせつ事件では、被害者がいないのは当たり前です。私は、今回の摘発については、違和感がありません」
奥村弁護士は、「不特定」の人たちでなく、特定の知人同士であっても、「多数」とみなされれば、公然わいせつ罪に問われると言う。つまり、特定の少人数でもない限り、乱交パーティーは基本的に御法度ということだ。
もし、パーティーがしたいのであれば、現状では規制のない国でするしかないという。
「刑法には、古い考え方に基づいているところがあり、時代に合わなければ変えられていくでしょう。こうした類のパーティーがあってもいいと社会的合意ができれば、将来は改正される可能性があると思います」