週刊新潮は2009年4月23日号で、朝日新聞阪神支局襲撃事件(1987年5月)の「実名告白手記」を誤報と認め、謝罪した。だがこの謝罪記事、「ニセ実行犯」島村征憲氏(65)に騙された「経緯」を書き記したもの。再発防止策への言及や新潮関係者への処分もなく、あたかも「被害者」であるかのような姿勢に、「説明責任を果たしていない」との声もあがっている。
「見解はすでに誌面に掲載」繰り返す新潮
「事件を解明に導く可能性を秘めた『証拠』の数々は全て、島村氏のもとにある」
「『証拠』を元に徹底検証できるのは、警察当局の他にはない」
新潮は09年1月から2月の4回にわたり連載した告白手記の最終回を、自信をもって締めくくっている。襲撃事件の「被害者」である朝日新聞に「事実と明らかに異なる点が多数含まれている」と、連載当初から疑義を呈されていたにもかかわらず、だ。
そして、連載終了後の2月23日、朝日新聞が新潮の手記を「虚言」と断じ、新潮社の責任にまで言及した検証記事に対しても、
「襲撃現場の状況について、当時の記者の記憶で『再現』したものと異なる証言だから事実ではない、と決めつけたりしている」
とし、「捜査当局の判断を待つだけ」と「反駁」していた。
手記の信憑性が揺らいだのは、3月19日、手記で「犯行の指示役」とされ、新潮に抗議していた元在日米国大使館員の男性(54)に、現金を支払い、和解したことだ。各社は「事実上誤報と認めたことになる」と報じたが、新潮は、
「第3者条項があるので和解内容は明らかにできない。本件に関する小誌の見解はすでに誌面に掲載しております」
と答えるのみ。朝日新聞が3月11日、24日の2度にわたり送付した質問状に対しても、
「小誌の見解はすでに誌面に掲載しております」
とし、「だんまり」を繰り返した。これに対し朝日新聞は4月1日にも再度検証記事を掲載し、手記を「放置できぬ虚報」とし「訂正、謝罪すべきである」と怒りをあらわにしていた。