「口臭が歯みがきで消える」と思っている人は少なくないのではないか。ところが、口臭を消すには歯みがきよりも「舌」をキレイにするほうが効果的であることがわかってきた。気になる口臭の原因が段々解明されてきて、オーラルケア市場がこれまでの虫歯や歯周病を防ぐための歯みがきに加えて、きれいな息、きれいな口内を保つためのエチケット商品へと広がりをみせる中で、「舌」に注目が集まっている。
日本人の成人9割に口臭がある!
八重垣教授は「口臭を防ぐには舌苔を取り除くことが大事」と話す
口臭の原因といえば、たばこやにんにく、ねぎなど食べ物のニオイから、歯みがきの磨き残しや歯石や歯垢、歯肉炎といった、いわゆる歯周病を原因とするもの、さらには加齢によるものや日常生活の不摂生などさまざまあるが、最近の研究で注目されているのが「舌」だ。
日本歯科大学の八重垣健教授は「間接的な原因としては歯周病だが、根本的な原因は舌苔(ぜったい)」と説明する。
口臭の間接的な原因といわれる歯周病はなんと、日本人の成人(20~54歳)の87.5%が患っている(05年歯科疾患実態調査)。一方、根本的な原因とされる「舌苔」は、舌や口内の表面に付着する「汚れ」によって起こる。虫歯や歯周病でないのに口がにおう人は、「舌苔」が原因とみられている。
つまり、日本人成人の約9割に「口臭がある」と考えられるわけだ。
カナダで診療歯科を開業していた経験がある八重垣教授によると、世界中で日本人ほど口臭に無頓着な人種はいないそうだ。「自分のことはわからないですしね。なかなか指摘してくれる人もいないですし、知らず知らずのうちに(周囲の人に)嫌われていることもあるのではないでしょうか」と指摘するが、実際に口臭が気になってうまく話ができなかったり、引っ込み思案になったりする人は少なくない。「口臭をなくしたい」という思いは切実なようだ。