レーザーを当てて近視を治す「レーシック手術」。タイガー・ウッズ、松坂大輔両選手らも受けたといわれポピュラーになったが、銀座眼科で集団感染が起きて改めてその安全性が論議になっている。どんな医者にかかるべきなのか。
「検査時に、あごやおでこの部分を消毒しなかった」
お詫び文を載せた銀座眼科のサイト
「今思えば、手術を受けて失敗だった。院長は、『1000人に1人しか失敗しない』と言っていたのに、悔しい」
東京・銀座の「銀座眼科」で2009年1月初め、レーシック手術を受けた会社員男性(29)は、こう明かす。この男性によると、院長は、左目の角膜の表面をうまくむけず、視力が回復しなかった。角膜再生まで2か月かかるといい、「その後に来て下さい」と言われたという。
銀座眼科では、別の眼科医の通報から、08年9月23日から09年1月17日までに手術を受けた患者の約1割に当たる67人が角膜炎などに感染し、うち2人が入院したことが発覚。中央区保健所が2月18日から3回にわたって立ち入り検査し、23日から当面診療を休止してもらう事態になった。
検査の結果、消毒装置の不具合ばかりでなく、手術室に手洗いがなかったり、素手で手術をしていたりという仰天事実が分かった。しかも、06年8月に開院してから装置を一度も点検せず、感染について08年10月に把握しながら3か月間も手術を続けていた。09年2月25日に記者会見した溝口朝雄院長は、「医師としてやはり問題があったと思っています」などと陳謝した。
レーシック手術は、2000年には2万人ほどだったのが、ウッズ選手らの影響もあって、07年には25万人ほどに。08年は、さらに増えて約45万人が受けたとみられている。保険はきかないが、10万円台の手術も登場するなど安くなり、8割以上の患者で成功と報じられて安全とも考えられるようになったことが大きいようだ。
前出の会社員男性も、そんな状況の中で、平日なら両眼を9万5000円でできるという破格の広告をネットで見つけ、「これくらいならいい」と銀座眼科で手術を受けた。ところが、思わぬ結果に。「検査時に、あごやおでこの部分をアルコール消毒しないので変だなと思っていました。ひっきりなしに客が来て空いた時間で片手間にやっている感じで、手術失敗でも説明に模型を使うなど手慣れているようでした。もう、ほかの病院でやります。お金はかかるけど、仕方がない…」