円高・ウォン安が急速に進み、「今がチャンス!」と韓国旅行に行く人が急増している。1年前に比べてウォンの対日本円価値はほぼ半分に下がり、免税店やアウトレットモールにはブランド品を買い求める日本人観光客が殺到。今や「日本人だらけだ」という声も上がっている。
買い物にエステ、そして焼き肉腹一杯
円高・ウォン安の影響で韓国旅行が人気だ
世界的な景気悪化と、原油価格の高騰による燃油サーチャージの値上がりで、海外旅行者が減っている。ところが、韓国に行く人は増えているという。JTBが発表した年末年始(2008年12月23日~09年1月3日)の動向調査によると、海外旅行者は前年同期に比べて4.6%減るが、韓国に行く人は24.7%増えると見込んでいる。飛行機で東京から3時間弱、福岡からは約1時間で行けて、2泊3日でも十分に楽しめる。旅行会社のパッケージツアーなら、ホテル代と飛行機代込みで3~5万円台という安さも魅力だが、急増している理由は別にあるようだ。
JTB広報担当者は、こう見ている。
「ウォン安が急速に進んだ08年10月中旬から、韓国旅行に注目が集まっています。昨年の同じ時期に比べて半分に下がり、サーチャージが値上がりした分を差し引いても、お得感があるのでしょう。ブランド品のような高価な買い物ほど、実感されているようです」
買い物やエステを目当てに訪れる女性や、焼き肉をたらふく食べようという家族連れなど幅広い層にうけていて、12月の週末はすでに予約が取れない状況だ。
「12月から来年3月までの予約数は前年比160%です。数年前の『韓流ブーム』の時にも旅行者がぐんと増えましたが、今回も同じくらいの伸びています」
と驚きを語る。
H.I.Sの年末年始の予約状況は、韓国が前年比150%と大幅な伸びを記録(08年12月23日~09年1月4日)。広報担当者は、
「ユーロやドルも下がっていますが、近場の韓国は週末を利用して行くことができて、トータルの予算が安く上がると好評です」
とPRする。
「円高ウォン安の今がチャンス! 韓国を買いつくす!」というキャッチフレーズで、ショッピングモールを巡るツアーを展開している。中でも人気は、07年にオープンした「ヨジュ プレミアムアウトレット」。約120のショップが入っていて、「ドルチェ&ガッバーナ」「ジバンシー」「バーバリー」「ヴィヴィアン・ウェストウッド」などのブランドがずらりと並ぶ。日本でも御殿場などで展開しているのと同じアウトレットチェーンだが、ウォン安の韓国で買えばさらに安くなるというわけだ。郊外にあり個人では行きにくい場所なので、ツアーに組み込んだところ、女性に好評だという。
韓国一大きい免税店は日本人だらけ
多くの旅行者が立ち寄る「免税店」で、最近、こんな光景が見られるらしい。
韓国観光公社東京支社の広報担当者は、
「韓国で一番大きい新羅免税店(ソウル)は日本人だらけだ、と聞いています。免税で安い上に、これほどの円高ですからね」
と語る。
韓国内に8店舗展開する「ロッテ免税店」は月間売上げが前年の1.5倍、購買客数も1.5倍に増えた(08年10月19日現在)。ロッテ免税店東京事務所によると、仏高級ブランド「シャネル」は日本の販売価格よりも25~30%安い。また、韓国の健康食品「高麗人参エキス」は約4割も安く、20万円分を買った日本人観光客もいたという。全体的にお得感が増して財布の紐がゆるみ、客単価は1.9%上昇している。
ウォン安はしばらく続くとみられていて、韓国に行く人は今後も増えそうだ。さらに、大手航空会社は09年1月から、サーチャージを下げると発表している。韓国は現在8000円だが、5000円に下がる。ある旅行会社の社員は、
「今年は燃油高騰や世界規模の景気悪化で首を絞められたが、ようやく明るい兆しが出てきました」
と話し、ほっとした表情だ。