伊藤ハムの東京工場(千葉県柏市)で使っている地下水からシアン化合物が検出された問題は解決するどころか、「霧の中」に迷い込んだ形だ。柏市は2008年10月27日に同工場が使用していた井戸を含む36箇所の井戸水を検査、シアンは検出されなかったと発表した。同市は「汲み上げた水の管理に問題がなかったのか調べてほしい」とまでいい、伊藤ハムの説明に疑いの目を向けている。
市内36本の井戸を調べてもシアン検出されず
伊藤ハムが、東京工場で使っている地下水から「基準値を超すシアン化合物が検出されたと」発表したのは08年10月25日。実は、08年9月18日の定期検査で水道法の基準値(1リットル当たり0・01ミリグラム)を2~3倍上回るシアン化合物を検出していたのだという。発表が遅れた理由は、井戸水から異常が出たのは初めてで、汚染していない井戸水の切り替えなどの対応に追われた、などと同社では説明している。現在、東京工場は稼動を停止し、製造したウインナーとピザ13品目計194万個を自主回収しているが、井戸水の汚染の原因は未だに不明だ。
しかし、柏市が緊急に同工場と周辺の7つの井戸を含む計36本の井戸を調べたところ、全ての井戸でシアン化物イオン及び塩化シアンは0.001ミリグラム/リットル未満。「安全基準値0.01ミリグラム/リットル以下だったことを確認した」、と08年10月28日に発表した。
柏市水道部はJ-CASTニュースの取材に対し、井戸水を使っている住人から多くの不安の声が寄せられていた、とし、
「伊藤ハムは地下水が汚染されていたと発表したが、汚染は見当たらず、住民の方々に安心してもらうことができた。汲み上げた水の管理等に問題があったのかどうか、しっかり調査していただきたい」
と怒りを見せながら語った。
旧日本軍の「毒ガス室」が汚染原因、も誤り
また、産経新聞が「工場の約300メートル東に旧日本軍の『毒ガス室』と呼ばれた施設が存在していた」ことが水質汚染の原因、と報道したことについて、
「旧日本軍の施設があったことは確かだが、毒ガスとは全く関係無い施設」
で、汚染物質が出るわけがない、と断言した。
同社製品の汚染はシアンにとどまらず、今度はトルエンが検出された。同工場が生産したウインナーで、ユーコープ事業連合(本部・横浜市)が販売したものの中に見つかった。同社は汚染を08年10月29日に62.7ppmと発表したが、翌日にはその6倍の最大188PPMもあったと訂正している。同社はトルエンの汚染は製造段階で生じたもので、先の地下水の汚染とは別ルートではないか、と説明しているが、どうしてこんなに立て続けに製品の汚染が出てしまうのか。同社に取材しようとしたが、
「担当者が多忙で捕まらない」
とし、未だに連絡が来ていない。同社のホームページを見ると、08年10月31日午後6時現在で、
「当ホームページは、2008年10月25日現在更新をストップしております」
などと書かれていて、社内は相当混乱してるようだ。