大相撲の八百長疑惑を報じた「週刊現代」を相手取って日本相撲協会が損害賠償を求めている裁判が、新たな展開を見せそうだ。審理では、北の湖前理事長が「八百長」や「故意の無気力相撲」の存在を全否定したばかりだが、17年前に協会幹部が「故意による無気力相撲が一部の不心得者によって行われることは許されない」と発言したテープの存在が明らかになったのだ。中には「カネで手に入れる」という八百長を認める発言もあり、裁判での証言と真っ向から対立するにもかかわらず、協会側は「現段階では何もわからない」と口をつぐんでいる。
「カネで手に入れる」という発言まで飛び出す
17年前に国技館で行われた会議の内容が波紋を呼びそうだ
2008年10月16日に行われた審理では、北の湖前理事長が証人として出廷。被告の講談社側の弁護士が「故意による無気力相撲は存在しないということか」と問うと、北の湖前理事長は「力が抜けたり、ということはあり得ると思います。八百長はありません」などと返答。弁護士と北の湖前理事長との会話がかみ合わず、「八百長」と「故意による無気力相撲」の違いがはっきり明らかになることはなかったが、いずれにしても、北の湖前理事長は、「八百長」と「故意による無気力相撲」の両方の存在を否定してみせた。
ところが、この前提を覆しかねないテープの存在が明らかになったのだ。民放各局が08年10月20日から21日にかけて、無気力相撲の存在について指摘するテープを放送。テープを録音したとされるのは、裁判に講談社側の証人として出廷している、元小結の板井圭介氏だ。91年9月6日に、東京・両国国技館で親方衆と十両以上の関取全員を集めて行われた緊急会議の様子を収録したものだという。
テープでは、二子山理事長が、
「皆様方にお忙しい中、今日来てもらったことは、無気力相撲について出席していただいたところであります。よーく耳の穴を掃除して、右から入ったら左へ抜けないように、左から入ったら右に抜けないように頭の中で止めていただきたいと思います」
と、強い口調で切り出したのに続いて、当時は監察委員長だった出羽海理事が
「優勝とか大関になろうとかいう時でも『何回挑戦しても跳ね返される、夜も寝れない、心臓がどきどきする』、そういう思いを何回も何回もして勝ち取るもの。これが得がたいものですよね。これを簡単に『カネ』で手に入れるということは、もうこれは稽古も何もしなくていい」
「絶対にあってはならない、故意による無気力相撲が、一部の不心得者によって行われることは許されないことであります」
などとして当時の状況を強く批判。仲介者を含む関係者は厳しく罰する方針を明言した。