マンション購入の勧誘で、脅されたり嫌がらせをされたりするケースが増えている。不動産不況による在庫増が背景にあり、5年前より倍増して全国で3000件近くの相談があるという。嫌がらせもエスカレートしているようだ。
「家に火をつける。乗り込んでいくぞ」
神奈川県内の30歳代男性には、業者からワンルームマンションの購入を勧める電話が頻繁にかかってきた。それも職場に直接だ。執拗なので、上司に代わって断ってもらうこともあったと明かす。
2008年2月のある日も、業者から勧誘電話があり、強い口調で断った。しかし、直後に宅配ピザ店からかかってきた電話には仰天した。
「70人前の注文がありました。作ってよいですか」
ピザ店もさすがに、これだけの大量注文に戸惑ったらしい。この電話でとんだ災難を逃れたものの、その後もしつこい勧誘に悩んでいる。
国民生活センターによると、このような悪質な勧誘が最近増えている。07年度は、5年前の倍近い2838件もの相談が寄せられた。ほかには、購入を断ると暴力団風の口調で「家に火をつける。乗り込んでいくぞ」と脅されたり、1日13時間も説明に拘束されたうえ、断ると胸ぐらをつかまれたりしたというケースがある。
もっとも、悪質な勧誘は、バブル崩壊後から見られ始めた。それが、99年度には約500件、03年度には約1500件と次第に増え続けているのだ。なぜ止められないのか。
確かに、脅しや長時間電話は、1996年の宅建業法の通達で禁止され、その後、施行規則になっている。ところが、特商法とは違って、購入しないと断った後の再勧誘を禁止していないので、しつこい営業を防げられない。また、業者名や人名、販売目的を言わなくも勧誘できるので、名乗らなかったり年金の話と言ってきたりする例も多い。
さらに、法規制のネックなのが、販売代行業者の増加だ。国土交通省では、「営業を外部委託されると正直やりにくい。違反行為の証拠を積み上げられない歯がゆさはある」(不動産業課)と認める。これまでに、違反で行政処分されたマンション販売業者はないという。