大学全入時代を迎え、大学の“倒産”が現実のものになった。私大の定員割れは全体の47.1%に達し過去最悪の事態。国の教育方針を決める文部科学大臣の諮問機関、中央教育審議会(中教審)は大学の統合再編も視野に入れて本格的な議論に入った。
9法人は「いつ、つぶれてもおかしくない状態」
鈴木恒夫・前文部科学相は2008年9月中旬、少子化が進み大学を取り巻く環境が厳しくなるなか「中長期的な大学教育全体の在り方を見直さなければならない」として大学教育制度の再構成や国際競争力の強化などの審議を中教審に諮問した。
これは、日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)が7月末に明らかにした私立大学の入学状況調査(08年5月1日現在)で、私大の定員割れが昨年比7.4%アップの47.1%(266校)になったことが"引き金"になった。
「定員割れの私大はかつて年20から30校だったが、1999年以降、急激に増加、06年には200校を突破した。少子化と規制緩和による大学数の増加が主な原因。文部科学省は、定員割れが進めば大学の経営破たんにつながり、在学生へ影響が出ると中教審に解決策を預ける事になった」(文部科学省担当記者)。
現実に、私大の経営状況は厳しくなっている。私学事業団が、08年1月にまとめた私大の経営状況調査では、521の大学法人のうち64法人が「経営困難状態」と判定され、9法人は「いつ、つぶれてもおかしくない状態」というショッキングな結果が出た。
大学人気の二極化も進む
「首都圏の大規模、ブランド大は地方会場での入試、全学統一入試で受験生の囲い込みを行なっている。これにより、地方より大都市、小規模校より大規模校という大学人気の二極化が一層、進んでいる」(同)。
私学事業団でも「地方の大学や小規模な大学は定員を縮小し、収支を均衡にさせる縮小均衡にならざるを得ない。ブランド力ある一部の大学は定員を増やしていくだろうが、多くの私大は規模を縮小しないと、いずれ淘汰される」と分析する。
文部科学省は規制緩和により大学を簡単に設立できるようにして増やし続けた。大学数は90年の507校から現在、227校増えて734校。少子化にもかかわらず大学を増やし続けた文部科学省の責任も大きい。全ての大学関係者は中教審の審議の行方を見守っている。