松下電器産業が2008年10月1日、いよいよ「パナソニック」に社名変更する。「経営の神様」と呼ばれた故・松下幸之助氏が創業して以来、約90年にわたって社名に使用されてきた「松下」。その看板がいよいよ外され、新生パナソニックの真価が問われようとしている。
ソニーと比べて海外ブランド力の弱さが目立つ
同社は08年1月、パナソニックに社名を変更するとともに、冷蔵庫などの白物家電に使ってきた国内ブランド「ナショナル」を廃止すると発表した。パナソニックはこれまで、テレビなどデジタル家電のブランド名として用いられてきたが、10月からは社名から製品まですべてがパナソニックに統一される。
大坪文雄社長はこれまでの会見などで、「郷愁に浸るより、より大きく成長する可能性のあるパナソニックに全社員の思いを結集させる」と強調してきた。幸之助氏の死後、松下社内には前例主義がまん延し、新たな挑戦への機運が薄れてきたとされる。「破壊と創造」を掲げた中村邦夫前社長(現会長)はそうした過去のしがらみを断ち切って社内改革を進めたが、その最終仕上げが社名変更だ。
パナソニックに統一することの最大の狙いは、国際的ブランド力の強化だ。今や日本メーカーの主戦場は、少子高齢化で縮小する国内から、急成長を遂げる新興国を中心とする海外市場に移っている。そんななか、「松下」「ナショナル」「パナソニック」と三つのブランドに割れていた松下は、同業のソニーなどと比べて海外ブランド力の弱さが目立っていた。社名変更はビジネス環境が変化する中での必然的な流れでもある。