公正取引委員会は英豪系資源大手BHPビリトンによる同リオ・ティントの買収提案について、独占禁止法に基づき、買収計画の提出を求める報告命令を出す方針だ。日本国内での競争が制限される恐れがあるという理由だが、海外企業同士のM&A(企業の合併・買収)を審査するのは初となる。
「鉄鉱石の価格交渉で著しく不利な状況に追い込まれる」
BHPビリトンは2007年11月、リオ・ティントを買収するとの意向を表明した。しかし、鉄鉱石の世界の輸出量シェアでは、ブラジルのヴァーレが約40%でトップ、次いでリオ・ティントが約25%、BHPビリトンが3位で約15%と、この3社でほぼ独占状態が続いている。BHPビリトンによるリオ・ティントの買収が実現すれば、さらに寡占化が進むこととなり、資源価格の決定力がいっそう強まる可能性が強い。このところの歴史的な原材料高騰にさらに拍車をかける懸念は強まる。
実際、日本の鉄鉱メーカーの価格交渉力は低下している。08年度の鉄鉱石価格は、ブラジル産が前年度比65%上昇、豪州産は最大96.5%の上昇といずれも大幅引き上げで決着した。経済発展が進む中国などの需要増が背景にあるが、「資源会社が価格交渉力を強めているのは事実」(鉄鉱関係者)という。
こうした資源高は自動車用や家電用鋼板の価格上昇につながっている。苦しむメーカーは価格転嫁を進めており、消費者にも影響が及ぶのは必至だ。
こうした中でのBHPビリトンの買収提案に対し、鉄鉱メーカーなどで作る日本鉄鋼連盟は「鉄鉱石の価格交渉で著しく不利な状況に追い込まれる」などとして、猛反発。世界の鉄鋼業界で組織する国際鉄鋼協会(ブリュッセル)も統合反対声明を発表した。 公取も07年末以降、欧州や豪州の規制当局などと買収問題について協議をし、対応を検討するという異例の取り組みを進めてきた。さらに、98年の独禁法改正で新たに設けた海外企業同士のM&Aの審査規程を初めて適用することに踏み切ったのだ。独禁法は市場の競争を制限するようなM&Aを禁じているが、日本市場に影響が及ぶ場合は外国企業同士のM&Aについても審査できるとの規程だ。