東京証券取引所は2008年8月19日、中国本土の企業として初めて東証マザーズに上場していたテレビ番組関連事業会社「アジア・メディア・カンパニー・リミテッド」の上場廃止を決めた。同社の前最高経営責任者(CEO)が会社資金を私的に流用したことが発覚し、監査法人が財務諸表への意見表明を見送ったことが原因。東証の審査能力も問われそうで、アジアでの中核市場を目指す戦略にも大きな痛手になった。
東証の上場審査が甘かったのが原因?
「投資家や関係者の方々には非常に申し訳なく、残念に思っている」
東証の斉藤惇社長は8月26日の会見で、経営トップが不祥事を起こしたアジア・メディアを上場廃止にしたことを陳謝した。ただ、「これが妙なトラウマになってはいけない。中国やアジア諸国の新興企業を東京へ誘致する活動は積極的に取り組んでいきたい」と述べ、戦略には変更がないことを強調した。
アジア・メディアは07年4月に上場。中国本土からの初上場として、アジア企業の積極的な誘致を進めたい東証関係者にとっても、アジア・メディアの成功を祈った。だが、その願いは今年6月に前CEOの私的流用が発覚し、あっさりと消えた。東証は6月下旬に上場廃止の恐れがあるとして監理銘柄に指定。東証の自主規制法人は、アジア・メディアの役員らから事情を聞いた。また、中国当局やアジア・メディアが前CEOの責任を追及する動きを見せなかったことを受け、東証は8月1日、前CEOを北京市の公安当局に刑事告発した。
証券市場では、アジア・メディアの不祥事は「上場企業として許されない」という批判のほか、「東証の上場審査が甘かったのが原因」「前CEOを刑事告発したのは、東証の責任から目をそらすため」などと、東証の姿勢を問題にする指摘も出ている。 これに対し、東証は「外国企業は、国内企業以上に厳しい審査をしてきた。上場後の不祥事を防ぐことはできない」(幹部)などと反論する。斉藤社長も「監査法人、主幹事証券会社、東証は、現地に行って調査して周りの情報も集めている。少なくとも上場時点では問題はなかった」と述べる。