マスコミは著名人の死去に備えて「予定稿」を用意するのが普通だが、米大手通信社のブルームバーグが、米アップル社CEOのスティーブ・ジョブズ氏死去の予定稿を誤って配信する、という騒ぎがあった。ジョブズ氏はこれまでに何回か健康問題が取りざたされているが、上場企業でもあるアップル社は「(ジョブズ氏の)健康はプライベートの問題」との姿勢を貫いている。この沈黙ぶりが、騒ぎが拡大した背景にありそうだ。
数千社が契約している企業向けサービスに配信
ブルームバーグが「訃報」を配信したのは、2008年8月27日夕方(米国東部時間)。記事の冒頭には「HOLD FOR RELEASE - DO NOT USE (解禁まで待て。使用禁止)」という「予定稿」を示す文言があったのだが、どういう訳か、数千社が契約している企業向けサービスに配信されてしまった。
記事では、ジョブズ氏のことを
「PCが電話と同じくらい使いやすくなるのに一役買い、アニメ映画の制作方法を変え、消費者をデジタル音楽へと引き込み、ケータイを改革した」
と紹介。予定稿ということで、年齢と死因の部分が空欄になっている。記事は2500語に渡る長文で、ジョブズ氏の経歴が詳しく書かれている。さらに、死去後に誰にコメントを求めるかについてのメモ書きのようなものも含まれている。その中には、ジョブズ氏とともにアップルを創業したスティーブ・ウォズニアック氏や、ライバルのマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏などの著名人が数多く含まれている。
ブルームバーグ側は誤報に気づき、
「アップル社についての不完全な記事が、不注意で配信されてしまいました。この記事は決して公開を意図したものではありませんでした」
として記事を撤回。予定稿にあるジョブズ氏の経歴を更新する作業中に、システムの操作を誤ったのが誤配信の原因とみられている。